〜カヤックで琵琶湖を旅するブログ〜
邂逅の水郷

 

 まだ11月の初めだというのに、寒い日が数日間続いた。こんなに寒くなったら水辺で遊ぶのはきついなと思っていたら温かい休日に恵まれた。こんな日こそ、カヤックに乗るチャンスだ。他の用事は犠牲にしてでも、出かけなくては!

 秋の行楽と言えば、紅葉狩りなのだが、僕としては金色に輝く葦原が続く水郷を漕ぎたい。いや、心情的は、漕がなくてはならないと言った方がいい。昨年の秋はここへ来ることは出来なかった。

 昨日と同じ今日、今日と同じ明日が、永遠に続いていくなら、「漕がなくてはならない」といった心情にはならない。僕くらいの年齢になってくると、あらゆる意味で「失う」ということが、徐々に身に染みて実感出来るようになる。毎年、同じ季節であれば同じ表情を見せてくれるこの水郷も、細部に至るまで同じというわけではなく、どこか違っている。今年の水郷の風景は来年には存在しない。

 いつもの出艇場所に到着して、カヤックのザックを降ろすと、ほどなく1台の車が到着し、ファルトボートが入っていると思われるバッグを降ろしている人がいた。少し話をしていると、このサイトを見てくださっているNさんだった。そんなこともあり、この日はNさんと一緒に漕ぐことにした。
 

 桜並木の水路を通り、葦原の水郷を抜けて西の湖へ向かう。Nさんは僕の後ろを漕いでいるので、ちゃんと着いて来ているか、Nさんの存在をパドルの音で確認しながら進む。もしこの日Nさんに会わなかったら、水郷部分を散策して終わっていただろう。やはり誰かと一緒だと、長い距離を漕いでみようという気になる。時折、冷たい風が吹き抜けていく。湖面一面が水鏡になるほど静かな状態ではないけど、この日は終始穏やかな日だった。さざ波に乱反射してキラキラと輝く湖面が美しい。

 水郷の葦原には、冬の水鳥がたくさん隠れていて、カヤックが近づくと驚いたように飛び去っていく。こちら側には悪さしようという気は無いので、そのまま同じ場所で綺麗な羽を見せてくれてもいいのだが、それはあちらの事情が許さないようだ。

 鴨鍋食べたいなあ。

 

 いつもの貝殻がたくさん落ちている岸辺で休憩する。水郷は意外なほどに上がれる場所が少ないので、休憩ポイントはいつも自ずから決まってきてしまう。Nさんは、今年からカヤックを始められたということで、新品の船体布はとてもきれい。僕のカヤックもついこの前まではそんな状態であったはずなのに、あちこちに補修の跡が年々増えて、色褪せてきている。

 僕のカヤックがまだ新品だった頃、この水郷で不思議な出会いをしたことがある。カヤックや琵琶湖のことがよく分からなくて、メールで親切に教えてくださった方に偶然出会ったのだ。僕はずっとその人を男性だと思ってメールしていたのだが、会ってみたら女性だったということもあり、お互いにメール相手であることを認識した瞬間は、不思議な気持ちで包まれていた。その時はカヤックを漕ぐどころではなく、お互いのカヤックを手で捕まえて、少しの間話し込んだんだったな。

 あれから6年、水上に出る度に、このサイトに必ず記録を残している。更新が稀なので、継続しているのかどうかよく分からないブログなのだが、それが続けるコツである(笑)

 この日、ご一緒したNさんもそうだが、ごく稀に、メールをいただくこともあるので、読んでくださってそれなりに役に立つこともあるのだろう。

 

 水郷に来ると必ず訪れる「よしの大竜神」。初めてここを訪れた6年前には祠の右側に木が生えていた。訪れる度に、枝が短くなり、ついには枯れて無くなってしまった。この祠と対になる木だったのに無くなってしまったのは残念だ。

 でも、上の画像を見ると6年前の画像にはなかった木が祠の左側に生えている。あの木の子孫だろうか。「失う」ことはとても残念なことである。失ったものは、かつて存在していたものであり、確定した過去がある。その過去にいつまでも固執していると、喪失感でいっぱいになる。失った後に、何かが生まれてくることが確定しているのなら、寂しい気持ちにはならないが、生まれるかどうかは不確定である。生々流転、生死流転の間に漂う身としては、傍観するしかない事柄が多すぎる。

 

(2010,12,6の記録)
 

 ここまで来ると、残りの漕程はあと少し。午後2時を過ぎたばかりなのに、日差しが弱くなってきた。竜神さんの辺りから、水郷巡りの観光和船の往来が多くなる。カヤックとはスピードが違うし、狭隘な水路ではすれ違うことが危険なので、通過するまで待ったり、後を付いて行ったりするのだが、たまに船頭さんと挨拶を交わしたり、船頭さんとお客さんとのやり取りを聞けるので、漕いでいて退屈せずに楽しめる。

 

 

帰宅してから調べてみたらNさんから7月にメールをいただいていて、

「いつか一緒に漕ぎましょう」

と、僕はNさんに返信をしていた。

またいつか、どこかでご一緒しましょう。

この日漕いだのは、10.8キロ。

 

中秋のマキノ

 夏の間、すっかりカヤックから遠ざかっていた。琵琶湖で一番お気に入りの場所のマキノで漕ぐ事にした。

 

 

 もう10月の終わりだというのに、今年はいつまでも週に何日かは夏日が含まれている。それでも、湖水はやはり夏のものではなく、パドリングシューズやロングジョンの内部に入り込んでくるとひんやりと感じる。

 

 湖畔には、まばらに人がいるだけで、カヤックに乗っている人とは出会わなかった。ほんのちょっと沖に魞が設置してあって、そこで作業をしている方がいた。

 

 


 昼食は、途中の道の駅で買った鯖寿司を食べる。かなり贅沢なランチだ。カヤックに乗る日は、組み立ててから撤収するまではカヤックから離れることはほぼない。

 

 湖岸の木々が紅葉し始めていた。本格的な紅葉シーズンもうもうすぐ。

 

 今までは目立たなかったのに、真っ赤な鳥居と金ぴかな寺院が目に付いた。

 

 

 撤収する時に、カヤックを裏返したら、こんな出っ張りがある。何だろうと思い、カヤック内部を見てみると、

 

 フレームが外れていた。これは、組み付けるときに外れたのか、カヤックを運ぶときに外れたのかよく分からない。あまり気持ちの良い状態ではないので、今後は確認する必要がありそうだ。場合によっては部品交換をしよう。
 

 

 

 

パドリングシューズ


 パドリングシューズを新調した。今までは、冬季は長靴、温かい時期はショート丈のパドリングシューズを使用していた。


○長靴

 足が濡れないという大きな利点がある。しかし、長靴の高さよりも深い場所に足を浸すと、当然、足は濡れる。その結果、水深に気を使う。経験はないが、沈した場合、長靴を履いたままでは動きづらい。つまり、危険である。早急に長靴の使用はやめた方が良い。


○パドリングシューズ(ショート)
 
 どうせ濡れるので、水深に気を使わなくても良い。水中での動作がしやすい。丈が短いので、収納性が良い。ただし、砂粒がシューズ内に入ると歩くのにとても痛い。


☆パドリングシューズ(ロング)

 濡れるが、丈が長いので、ネオプレン素材で保温される。砂粒がシューズ内に入らないので、快適。

 BLUE ACE マジックシューズ  がコスパ抜群なので購入しようと思ったが、在庫がなかった。パドリングシューズは、素材がネオプレンなだけに、締め付けられるような感じになるので、通販ではなく、試し履きしてから買いたい。結果的に、納得いくまで琵琶湖カヌーセンターで試し履きさせてもらい、PEAK UK というメーカーのパドリングシューズを買った。
 使用感はすこぶる良い。久々にカヤック用品を購入したが、いい買い物だった。
長良川2016初夏


 ゴールデンウィークもすっかり終わり、世間がバカンスモードから通常モードに切り替わった5月の中旬、未だバカンス気分が抜けないので、例年よりも早いこの時期に長良川を下ってみた。アウトドアでの活動にはこの時期は最も適しているので、今のうちに楽しんでおきたい。紫外線が強くなってきているのは困るけど、夏に比べると暑さはかなりましで、それになによりも、季節が夏に向かうと思うだけで気持ちが高揚するのだ。

 いつも千鳥橋からカヤックを出しているのだが、今回はそれよりも4キロほど上流から出発することにした。つまり、その4キロの区間は未開拓エリアである。楽しみでもあり不安でもある。




 出艇場所で車からカヤックを降ろしていつもどおり組み立てる。何度やってもテンション掛けにはいつもちょっとだけ苦労する。
10時に水上に出る。水温はそれほど冷たくはない。ゴミは落ちていないし、水もきれい。

 漕ぎ始めてすぐに、瀬の音が聞こえてくる。




 この最初の瀬が、この日の最大の難関だった。流れが速く、カヤックが吸い込まれるように流されていく。そのうち水深が浅くなり、底を擦りながら進んでいくがもはや制御不能状態。バレーボール大の石がゴロゴロ転がっていて、カヤックがそれに引っ掛かり止まってしまった。流れに対してカヤックが横向きになった状態で石に固定された形になって、沈しないようにバランスを保つのがやっとだ。水深が浅い場所なので、沈しても何ら問題はないが、それでも、沈は嫌なので、何とか脱出しようとしてもがいた。もがくは、「藻掻く」と漢字で書く。文字通り、パドルで石に付いた藻を掻くような様で、何とか脱出した。
 こういう状況になるかもしれないという予測はしていたので、重いけど丈夫なアルミシャフトのパドルをこの日は使った。この瀬がこういう状態であると予め知っていたのであればポーテージしたのだが、気づいた時には瀬に突入してしまっていた。
 次回からは、この瀬はポーテージすることにしよう。ファルトでこんなことを繰り返していたら、艇を傷めてしまう。今回は幸いにも船体布に穴が開くこともなく、切り抜けることが出来た。




 この辺りは、両岸から山が迫っていて、風光明媚。

 対処不能な急流浅瀬は困るけど、容易に通過出来る短区間の瀬がところどころにあると、変化があって楽しいと思う。



 
 なぜカヤックに乗るのかと問われたら、ジョージ・マロリーのように、

Because it's there.

と、答えられれば格好いいのだが、僕の場合は、ストイックなものではなく、快楽追求的な要素がある。


 川面を駆け抜けていく風がひんやりとして心地よい。空が青い。水がきれい。船体布を通して水の弾む感覚が脚に伝わってくる。




 この辺りは、文化庁が「長良川中流域における岐阜の文化的景観 」として指定している場所。
川原にカヤックを上げて、体を伸ばしてしばらく休憩する。ここで、この日の行程のほぼ半分。

 岐阜の市街地に当たるため、橋を通過していく人たちが多い。3人の自転車に乗った高校生の女の子がこちらに手を振っていった。




 風が川面に吹き付けると、傷を負ったようにその部分に細波が発生する。




 いつ見ても美しい姿のJR東海道線の橋。上り線の橋梁は大正3年に供用開始とのこと。



 
 通過した後、旋回して川面ギリギリにカメラを構えて撮ってみた。ここまで来たら、今日の川旅もほぼ終わる。

 この日漕いだ距離は20キロ。
 
和邇から蓬莱


 ゴールデンウィークの晴れた日、湖西のお気に入りのコース、和邇から舞子浜まで漕ぐことにした。カヤックに乗るときは事前に天気予報、とりわけて風速はよく確認するようにしている。風も穏やかで空も青くて、気持ちの良い一日になりそうだ。



 
 いつもどおり、和邇浜へ荷物を降ろしてカヤックを組み立てる。

 例年、ゴールデンウィークからロングジョンは着込まない。でも、カヤックを水に浮かべ、乗り込もうとして足を水に浸すと水温が予想よりも低い。カヤックを組み立てている間はとても暑く感じられるのだが、沈した場合、低体温症を心配しなくてはならない。こんなことなら、ロングジョンを車に乗せておけば良かったとちょっと後悔する。



 和邇浜からしばらく漕いでいると、東からのうねりが大きくなってきた。常に横波を受けて漕ぐことになるので、気を使う。そのうち収まるかもしれないという希望的観測の元に、しばらく漕ぎ続けるが、一向に状況は変わらない。ロングジョンを着込んでないから沈したくないので、蓬莱駅近くの浜辺に上がって様子を見ることにする。
 
 昼食を食べながら、湖面を観察し続けるが、うねりの状況は変わらない。次の駅まで漕ぐか、ここで撤収するかの選択に迫られる。今日はまだ30分しか漕いでいないのに。。。
 試しに、もう一度カヤックに乗り込んで漕いでみたが、すぐに諦めた。怖々、漕いでいても楽しくない。駅が近くにあるこの浜で今日は終わりにしよう。




 ほとんど風も吹いていないのに、このうねりの大きさは何だろう。

 帰り際、湖東の湖岸道路を運転中、琵琶湖を見ると白波が立っていた。湖東では風が吹いているのだろう。湖東で発生した風浪が湖西にうねりとなって押し寄せていたのだ。

 ファルトボートは、とかく準備と撤収に時間がかかるので、漕ぐ時間が少ないと悔しい気分になるが、状況が許さないのに無理に漕ぐと危険であるし、そのような楽しくない状況で漕ぐと、禍根を残し、しばらくはカヤックに乗ること自体が嫌になってしまう。そんなわけで、こういう時は早々に撤退するのがいい。

 自然が相手なのだから、こんな日もある。