〜カヤックで琵琶湖を旅するブログ〜
モノトーンの湖


 ついこの間まで咲き誇っていた桜もすっかり散ってしまい、湖面に浮かんだ花筏も今となっては跡形もなく、枝の葉の緑も日ごとに濃くなっていく。春爛漫とした景色は、既に過ぎ去り、季節は初夏に入ろうとしている。

 天気予報を見ると風がなさそうだし、夕方までは雨の心配もなさそうなので、少しでも漕げればと思い、長浜の湖岸へ向かった。


 フレームを組み立てる時に、久々にやってしまった。フレームの接合部に指を挟んでしまい、血豆が出来てしまった。幸いにも出血には至らずに、内出血で済んだのが幸いだった。油断するとこうだ。次回からはグローブを嵌めて作業するようにしよう。

 この辺りはマキノの浜辺に比べると岸辺にゴミが多い。なぜなんだろう?風向きのせいで、ここにゴミが流れつくのか?

 「日本は、外国と比較してゴミが落ちていない。」

 と言うが、日本人にもゴミのポイ捨てをする輩はいる。まったく許せない行為だ。しかし、自治会等の市民団体のボランティア活動で、清掃活動を行っている人達がいる。そうした活動に加わってみると、ポイ捨てをしていく人がいかに多いかが分かるし、そうした心無い行為に対して腹立たしさが募っていく。ゴミが落ちていないのは、そうした人たちの不断の努力の結果だと思っている。

 琵琶湖を遊び場にする場合でも、カヤックを漕いでいる最中に、タオルを無くしたりするとポイ捨てと同じ結果になってしまう。そのまま沈んでしまうと、拾えないゴミになるので、注意しないといけない。





 こんな場所を見付けるとパドルの動きを止めて木陰でプカプカするのを楽しんでしまう。




 天の川河口。釣り人がたくさんいたので、あまり近づかずにUターンする。

 温かくなってくると、このブログの閲覧数も増えてくる。カヤックの道具のインプレッションは、ブログ価値が高いと思うが、漕行記は、僕自身の個人的な思いを綴っているだけなので、読み飛ばされているだろうなあ。たまには、道具の記事でも書いてみようかな。



 天気予報どおり雲が多くなってきた。雨が降ると困るので、早々に陸に上がった。正直なところ、もう少し漕いでいたかったけど、またそのうちに。

 7キロほどの水上散歩だった。ここのところ、雨が降り続いたせいか、湖水が濁っていた。





 
冬の名残と初夏の気配の中で花は咲く。



 平地ではすっかり散ってしまった桜も海津大崎では今が盛り。早朝、天候を確認してカヤックを車に積み込み、湖北へ向かう。この日のカヤックツーリングの予定は、永原駅近くの大浦川から琵琶湖に出て、海津大崎を経由してマキノへ向かい、電車で永原駅まで戻るという行程だ。8時過ぎに湖西線の永原駅に到着する。この日の未明に、近畿地方で大きな地震があったので、駅で電車の運行状況を確認してから大浦川の畔でカヤックを組み立てることにする。この地域の桜のベストシーズンの土曜日なので、ファルトを組み立てる人であふれていたらどうしようと思ったのだが、そんな心配をよそに、いつも通り僕一人だ。

 この日はアルピナ1−450ハイブリッドで行くことにする。この艇はアルピナ2ー430よりも荷物の積み方に気を配らなくてはならない。完全に組み上げてからだとカート等の大きな荷物を収納しづらいのだ。そのような理由で、浮力体や荷物を収納しつつ組み立てていく。
 組みあがったカヤックを持ち上げて川べりまで運ぶが、僕には重過ぎる重量だ。運ぶのがかなりきついので、それだけに神経を集中させてしまい、艇をぶつけたりして船体布を傷めないか心配だ。

 9時にカヤックを水上に浮かべて大浦川を琵琶湖へ向けて下る。川岸の枯れた葦に冬の名残を感じる。

 大浦川の河口には、大浦の集落がある。川岸の桜は満開だ。山里と桜と静かに流れる川。何と癒される光景だろう。この時期に、ここに来ることが出来て良かった。

 桜は毎年必ず咲くが、必ず見ることが出来るとは限らない。2月に亡くなった僕の祖母は、今年の桜を見ることは出来なかった。

 来年もここで桜を見ることが出来るのなら、それは幸せなことなのだろう。












 河口から琵琶湖へ入った辺りで、フットブレイスを装着し忘れているのに気づく。しかし、この日は沈した時に備えて、着替えをドライバッグに詰め込んで足元に置いてある。そのため、足がその荷物で固定されるため不便は感じないので、この日はそれで通すことにする。







  本来であれば、大浦川の河口から東に向かい、小さな入り江を一周してから海津大崎へ向かうと、より楽しそうなのだが、そのルートだと沖を1キロほど漕ぐ ので僕一人では危険だ。そう思って前方を見ていると、スタンドアップパドルボードで、沖を移動している人が2人いるのが見える。これって湖に落ちた時、すぐにリカバリ出来るのかな?沖へ出るのは、特に水温の低いこの季節は危険ではないのか?それとも、見た目よりも波や風に強いのか?




 岸辺で目立つのは桜の花ばかりではない。若々し過ぎるまだ柔らかい新緑が初々しい。木々が萌える有様に、初夏の気配を感じる。



 5艇ほどのカヤックのツアーに参加している人たちがいる。インストラクターらしき人が漕ぎ方やカヤックの種類や価格を説明している。
 
 この日は、魞(定置網)に2か所遭遇した。ツアーの人たちはリジッドだということもあり、ワイヤーの上を通過していたが、手で持ち上げたら下をくぐれそうだったので、僕は下をくぐり抜けることにする。沖へ出て、迂回するには距離があり過ぎる。




 1時間くらいカヤックの中で座っていると、姿勢が固定されて背中や腰が痛くなってくるので、一度上陸して休憩することにする。




 海津大崎の岬に近づくたびに花見客が増えてくる。観光船も頻繁に通るようになり、引き波に気を配らないといけないようになる。
 
 船が進むときに後方に発生する引き波とは、波紋が形状を変えたものである。湖に石を投げ込むと同心円状に波紋は広がっていくが、波紋が広がるスピードよりも船の進むスピードが速い場合に波紋は引き波に姿を変える。




 海津大崎の岬の西側は、岩礁地帯になっている。大きな岩が水中に沈んでいて、それに気が付かないと座礁してしまう。そのため、慎重にゆっくりとカヤックを漕ぎ進める。スピードを落とすことで、水中の岩を目視しやすくなるし、座礁してしまったとしても、衝突エネルギーを小さくする事が出来るので艇の損傷を抑えることが出来る。

 そう思って漕いでいると、後方から、KG−1に乗った60前後くらいの男性が、スコップみたいな形状の木製パドルを巧みに操作して、僕の横を漕ぎ抜けて行く。
 その刹那に、僕の目の前で座礁する。でも、パドルを杖みたいにして座礁した岩に突き立ててカヤックを浮かせて脱出して、何事もなかったかのように行ってしまう。慣れた感じの熟練のパドラーに見えたが、底に穴は開かなかったのだろうか?
 パドルのそういった使い方は、木製やアルミならいいのだろうけど、カーボンやグラスだったら、傷めてしまいそうだな。


 しばらく漕いでいるうちに冷たい風が吹くようになり、波も出て来た。ちょうど12時になったので、大崎寺を少し過ぎた辺りで上陸し、持参したおにぎりを食べて、防寒目的でカッパを着た。寒くなって波も出てきたので、楽しくなくなってくる。トイレにも行きたくなってきたが、あいにく近くにはトイレはない。いつもだったら適当に済ませるのだが、花見客でいっぱいなので、そうすることも出来ない。
 ここからはがんばって漕いで一目散にマキノの湖のテラスへ向かうことにする。そんな状況でも、この辺りはカヤックをやっている人が多い。やはり一年で一番カヤックでここが賑わう時期だからか。





 1時頃、マキノの湖のテラスに到着する。この日は出艇してから4時間も楽しんだので、これで十分だ。上陸した場所に桜の木があったので、写真を撮っていると、花見客のオバチャン達がその桜の下に座って昼ごはんを食べ始めた。僕はカヤックを分解し始める。船体布のジッパーを開けていると、オバチャンがカメラのシャッターを押してくれと頼みに来たので、集合記念写真を撮ってあげた。年代的にフィルムカメラかと思ったら、しっかりとデジカメだった。お礼に柿の種をくれた。

 撤収が終わり、カートを引きながらマキノ駅へ向かった。地震の影響で乱れていたダイヤも通常に戻ったらしく、定刻通りの2時51分の電車に乗り永原駅へ向かった。

 この日漕いだ距離は11キロ。


 帰宅後、船体布を乾かして、翌日にチェックしたら船体布に擦れた跡があったので、穴は空いていないけど、念のためスーパークリアを塗っておいた。
 来年もまた必ず、この時期にここに来よう。


姉川で魚と戯れた日



  特にどこかを漕ぎたかったわけではなく、休日に早起きしたのでカヤックに乗りたくなり、琵琶湖へ出かけた。手軽に行ける南浜へ向かった。浜へ向かう公園の木陰でカヤックを組み立てる。木陰と芝生というのは、出艇準備をするには良い環境だ。これで水辺がもう少し近かったらいいんだけど。

 この日は、試してみたいことがあった。まあ、この日に関わらず、カヤックに乗るときはいつも何かを試していると言ってもいのだけど。普段、デジタル一眼レフを首から提げて写真を撮っているのだが、RAWで撮影出来て、GPSロガー機能もあるキヤノンのPowershot S100 というコンデジを買ったので、一眼レフの代わりになりえるのか?




 10時くらいに浜辺からカヤックを出す。その時間帯は予想に反して湖面に少々、波が立っている。
下の写真だとそれほどでもないが、時おり大きなウネリが押しよせて来たりするのだ。それなら、ウネリが押し寄せて来た時に撮影すればいいのだろうけど、そういう時は写真どころではないのである(笑)

 今回も最初はバラスト無しで15分くらい漕いでみる。しかし、やっぱり不安定。そんなわけで、シートのすぐ後ろに8キロくらいの水タンク、フットブレイスの前に3キロくらい荷物(ドリンク)を積んでみる。やはり、安定性が随分変わる。この程度なら操艇が重くなるような感じもしない。僕の技量と体重だと、このセッティングがベストなようだ。






 琵琶湖は、湖面の様子があまりよろしくないので、姉川で、まったりと過ごす事にする。いつものことながら、小鮎の死んだものがたくさん浮いている。秋にかけて、その数はさらに増していくのだろうけど。その腐臭や水辺の植物、プランクトン、藻。。。。等が織り交ざり、夏の琵琶湖の匂いがする。

 上流から運ばれた土砂が堆積し、それが川の流れの都合で運ばれ、ところどころ浅くなったり深くなったりしている。川底が浅くなっている場所ではスピードを落としてゆっくりと慎重にカヤックを漕ぐ。カヤックに乗り始め頃は、そんな事はお構いなしで漕いでいた。スピードが出ているにも関わらず、川底が浅くなっているのに気が付かないと、カヤックの底を擦り船体布を傷めることになる。僕のアルピナ2−430には、そうした行いの結果生じた穴の補修跡がある。

 




 小鮎がたくさん泳いでいるのを目にする事は出来るが、体長30センチくらいの魚も素早く泳いでいる。カヤックの後部に、時折、「ドンッ」という衝撃を船体布を通して感じるが、その大きさの魚が突進して来たのだと思う。

 姉川河口の水上散歩も飽きてきたので、琵琶湖へ戻ることにする。先ほどは波が立っていたのに、それがすっかり収束している。




 河口に堆積した土砂の上に竹生島が乗っている。


 南浜の水泳場に上陸し、持ってきたおにぎりを食べる。立て看板に、バーベキュー禁止と、日本語やポルトガル語で書かれているが、日本人も外国人もそんなのはお構いなしで、バーベキューをしている。

 以前、オーストラリアへ旅行したとき、川辺にバーベキューの施設(コンロ)があって、誰でも利用出来るようになっていた。こういう場所では、どうせバーベキューをやりたくなるのだろうから、決められた区域で有料にすればいいのではないかと思うのだ。ただし、ゴミを捨てたり許可区域以外で行う等の違反をしたら、罰金10万円とかにすればいいと思う。罰金は安いものではいけない。高くするべきだ。

 まあ、僕はカヤックなので、バーバキューはやらないけどね。火の着いた炭が船体布にくっついたら、溶けて穴が開くだろうな。




 魞に設置されている網が一部盛り上がっている場所がある。これと、長浜の街を背景にして、白黒写真を作るとおもしろそう。

 白黒フィルムを入れた一眼レフで、湖面に映った魞の杭と組み合わせて何枚か撮ってみる。

 暗室作業が楽しみだ。


 湖面が穏やかだったのも束の間。すぐにまた波が立つようになってきた。漕いでいても楽しくないので、この日は撤収。漕いでいたのは3時間くらいかな。

 漕いだ距離は5.8キロ。

 キヤノン Powershot S100 とカヤックの親和性のインプレッションは、また後日。

 

湖北で鵜を追いかけた日

 梅雨の合間の晴れた日曜日、久々にY君と湖北の島を巡った。前回、漕いでいる途中でいつのまにかエアスポンソンの空気が抜けていたので、果たして今回は大丈夫か確かめる意味もあって、カヤックはアルピナ2−430を使う。暑いのでコーミングカバーは装着しない。夏場、岸部でゆったりと浮かぶときは、オープンデッキがいいかも。本気で漕ぐときは、シーソックを装着しないと安心は出来ない。

 朝方は涼しくても、日光を浴びて組み立て作業をしているとやはり暑い。Y君は、カヤックに乗るのは1年以上のブランクがあるので、組み立てに戸惑っている様子。カヤックを水辺まで運んでいる時に、足の裏がチクリとするので、サンダルの裏側を見たら菱が突き刺さっている。裸足だったら、かなり怖いことになっていた。

 10時過ぎに準備が整い、湖上へ出る。


 葦が微妙に生えている場所を抜けると、そこは、菱の平原になっている。菱の葉は、秋になると真っ赤に紅葉する。紅葉は陸上の樹木だけのものではないのだ。Y君から、ずっと以前、菱の実を塩ゆでして食べたことがあるという話を聞いた。ここなら秋になたら、菱は採取し放題なんだけど、果たして旨いのかな。栗に似た味ということらしいけど。でもここの菱って、小型みたいだけど本当に茹でて食べることが出来るの?そもそも、カヤックに乗りながら採取出来るのかな。




 水面が反射して、画像の上半分は表現力が乏しい。PLフィルターを持ってこれば良かったかな。



 
 菱の平原を抜けて、南へ向かい、石碑のある島を一周することにする。鵜が群れて飛んでいる。この時期は繁殖期なのだ。普段は人がほとんど立ち寄る(漕ぎ寄る)ことのない島に、侵入者を発見し、危険を察知してコロニーから飛び去っていく。この日は、カヤックに糞を落とされなくて幸いだった。Y君は、命中していたようだけど。

 

 飛んで逃げる鵜もあれば、湖に飛び込む鵜もいる。泳いでいる鵜がいたので、併漕してみる。たまにカヤックの下に潜り込んだりもする。菱の平原は、パドルを水面に挿したときに、魚が驚いて跳ねることが、漕いでいると頻繁に起こる。魚影が濃いのだろうな。言い換えれば、鵜にとっては餌が豊富だということになる。それにしても、いくら何でも、鵜は増えすぎじゃないのかと思うくらいだ。




 石碑の島を一周したところで、巣から落ちたと思われる鵜を発見した。雛と言うにはかなり大きいが、それでもまだ飛ぶことは出来ないでいる。親鳥を呼んでいるのか、しきりに喉を鳴らしている。
 巣から落ちたこの雛はどうなるのだろうか。

 

 次に、二番目の小さな島へ向かう。昨年の秋に来たときよりも水位が上がっているせいか、島の面積が狭くなっている。

 この辺り一帯に生えているアカメヤナギ(多分)の枝は、鵜の巣だらけになっている。巣を作る事が出来る枝には、全て巣が作ってあるのではないかと思えるくらい。人間社会で例えるなら、大都市圏か。地価が高そうだな。


 3番目の島は完全に水没していた。やはり梅雨時は水位が高いらしい。
戻るにはまだ時間的には早いので、北へ向かってみる。冬の渡り鳥がいない季節なので、通行してもいいのかと思ったら、テトラポットの外を通行するようにというアナウンスが野鳥センターからあった。それはいいのだけど、テトラポットってかなり沖にあるし、その近くまで漕いでみると、テトラポットの外側は、波が立っている。荒れているほどじゃないけど。そんなわけで、引き返す事にする。

 

 水上というのは、陸上と違って造形的なおもしろさを発見しやすい。



 1時過ぎに、出艇した場所へ到着する。

この日の水位はマイナス2センチ、漕行距離は6.2キロ。

海津大崎で花見

 いつかは、「お花見カヤック」というものをやってみたいと思っていた。桜は、開花期間が短いうえ、その期間中に、休日と天候の都合が着かないと、ツーリングを実行するのは難しい。

 芸術作品は、ただ制作すればそれでいいというものではなく、完成度が高く洗練されていなくてはならない。 カヤックツーリングにおいてもそれと同じで、ただA地点からB地点に行けばいいというものではなく、その道中で得るものが多いほど良い旅となる。しかし、毎回完成度が高く洗練された旅をするのは様々な要素が左右するので、簡単ではない。さて今回はどうか。。

 空が白みかけた5時過ぎに家を出て永原駅に6時30分に到着する。今回は、まだまだ不慣れなアルピナ1−450ハイブリッドを使用した。
 桜のシーズンなので、カヤックを組み立てる場所がないくらいカヤッカーで溢れていたらどうしようと思ったが、そんなこともなく駅前はいつもどおり誰もいない。安心したが、少し寂しくもある。アルピナ1−450を利用した電車行は今回が初めてになる。組みあがったカヤックに荷物を積載しようとしたが、アルピナ2−430には余裕で艇内に収納出来た量の荷物が収納出来ないのだ。長さにして20センチ長いので、ボリュームは低くても積載量は同じくらいかと思っていたが、そうではない。

 今回は、途中で荷物の出し入れの回数が多いような気がしたので、シーソックは使用せずに浮力体を使ったが、それで荷室がますます狭くなったみたいだ。カヤックのザックとカートは何とか艇内に収納出来たが、着替えや小物が入ったリュックサックは後部デッキに固定した。

 次回は後で書くけど、バラストも積載する予定なので、荷物の積み方については再考しないといけない。



 
 7時30分にカヤックに乗り込み水上の人となる。やはりアルピナ2−430と比較すると安定性は低い。乗り沈、降り沈は要注意だ。カヤックを少し進めると、堤防の上から花見客の老夫婦から声をかけられた。彼らは徒歩で海津大崎を経由してマキノへ向かうとのことだ。陸上と水上、ルートは違えども同じ目的地へ向かう道中の安全をお互いに祈り別れた。

 川を少し下ったところで、フットブレイスの位置を調整していないことに気が付いた。つま先を固定出来ないので、快適なパドリングが出来ない。でも、カヤックに乗った状態で手を足元に伸ばすと沈する可能性がある。アルピナ2−430なら多分、大丈夫かもしれないが、450は絶対無理だ。しかし、上陸出来そうな場所はしばらくないので、そのまま川を下っていく。この時間帯、太陽が低い位置にあるため横から光が注ぎ込むので、目の前のもの全てが立体的に見える。それが水面に映り込んだ光景はとても美しい。美しいのだが、フットブレイスの位置が気になって、それを満喫出来ない。

 ようやく河口に辿り着き、琵琶湖に入る。琵琶湖は、ごく弱い風が吹いているせいか小さな波が立っている。しばらく漕いで、小さな浜辺を見つけ、そこでフットブレイスの位置を調整する。しかしこれって、毎回調整するのは面倒なので、何か目印を近いうちに付けておいた方がいいな。

 大浦の辺りは桜はまだ咲いていない。つぼみの状態だ。手を水に浸けてみるが、この時期はまだ冷たい。沈したくはない状況だ。

 しばらく漕いでいるうちに曇ってきた。地形的な要因によるのか、この日の天候の状態がそうなのか分からないけど、漕いでいる場所によって曇ったり晴れたりしていた。海津大崎が近くなってくると、開花し始めた桜の木が、ところどころに現れるようになり、花見客を乗せた観光船も往来している。





 海津大崎の先端は、岩礁が多いので、それにカヤックを衝突させたり座礁したりしないように注意して漕ぎ進む。ナビで計測したら、アルピナ1−450の巡航速度は、僕の漕ぎ方だと時速5キロくらいみたいだ。アルピナ2−430よりも2割ほど速いような気がする。風や波の状態によって、4キロの時や6キロの時もあるけど、腕が苦痛にならない漕ぎ方で漕ぎ続けるなら、時速5キロと見ていいだろう。これは、今回のツーリングが終わった後で気づく事だが、アルピナ2−430よりも、腕への負担が少ないので、より遠くへ行くことが出来るということだ。漕いでいてもグングンと進んでいるような気がする。時速4キロと5キロなんて大差ないように思うけど、意外とこの差は大きいのかもしれない。

 ただやはり安定性に不安が残るので、怖くてリーンは出来ない。こわごわ、わずかな体重移動をして艇を曲げることになる。やはりバラストを積んだ方が良さそうだ。10キロくらいの水タンクを積めばいいだろう。僕の体重は61キロなんだけど、70キロくらいの人が乗るといいのかもしれない。




 
 海津大崎の突端から半島の西側に回り込むと、頂に雪が残る山々が見えた。山の頂には冬の名残が、麓の桜には春の気配が、存在している。

 ほんの数分、漕ぎ進むだけで空模様はがらりと変わる。同じ日にわずかな時間をずらしただけで、これだけ変わるとは。ここまで来ると、さすがにカヤックの姿がチラホラ遠くに見えるようになる。満開とはいかないまでも、桜がちらほら咲き始めているので、陸上でも花見客でにぎわっている。

 大崎寺の近辺からだと思うけど、スピーカーから、

「あまざけー。あまざけは、どうですかー。」

という販促の宣伝が聞こえてくる。もしかしたら、甘酒ではないかもしれないが、僕にはそう聞こえる。この音声は、対岸の知内川辺りでも、よく聞こえた。そんなに強固に甘酒を販売したいのだろうか?
それにしても、本当に甘酒なのかな。



 それにしても、この日は大量のカヤックを見た。こんなにたくさんのカヤックを見たのは、この日が初めてだ。でも、マキノの高木浜から海津大崎のエリアにしかいない。少し離れた場所から漕ぎに来る人は稀なのだろう。だから永原からの道中は、誰にも会わなかった。


















 しばらく漕ぎ進み、高木浜に到着する。この辺りは、いつ来ても気分がいい。カヤック乗りが集まるのも分かるような気がする。




 

 先ほどの寒々とした光景とは違い、ここは、温かさであふれている。桜が咲き始め、ユリカモメが舞い、浜辺を散歩する親子がいる。(後姿しか見えないけど、きっとこのお母さんは美人だな。)

 そんな風景を眺めながらパドルを動かすのがとても好きだな。人の生活がすぐ近くにある場所はほっとする。
 
 目的地の高木浜の湖のテラスに到着したが、時間はまだ10時で、体力的にも余裕がある。ここで撤収してマキノ駅から電車に乗る予定だったが、もったいないので近江中庄まで漕ぐことにする。この湖のテラスの周辺は、カヤックが多い。あいさつを繰り返して、マキノプリンスホテルの前を通り過ぎ、いつも通り知内川を遡ってみる。この日は琵琶湖の水位は17センチで、水量が多い。前日に雨が降ったせいか、その水が知内川を満たしている。


 
 1、2ヶ月過ぎれば、小鮎をはじめとする魚達の姿でいっぱいになるこの川も、春先のこの季節は静けさを保っている。
 ここから見える山の頂にも雪が残っている。

 知内川の河口で、カヤックから降りて、休憩した後、カヤックに乗り込むときに、バランスを崩し、艇内に水が入ってしまった。
 浅い場所だったので、川底に手を突き、完全なる乗り沈には至らなかったが、深い場所だとやばかったかもしれない。そのため、右腕がびしょ濡れになる。


 知内川から南へ向かうが、そこから先は、カヤックをやっている人は誰もいない。
近江中庄駅近くの浜に到着したのは、11時15分。風が出て、曇ってきたので、ここで撤収した方がいいだろう。この日は、不覚にも食料を持って来るのを忘れていたので、腹も減ってきたことだし。幸い、この近くには例のカレーの店がある。

 この日の漕行距離は14.3キロ。

 電車の本数が1時間に1本しかないので、急いでかたづけなくてはならない。そういう時に限って話しかけて来る人がいる。既にフレームをバラバラにしてダランとした船体布が干してある状態だったのだが、やはりこんな乗り物で永原から来たのが驚きだったようだ。ザックに荷物を収納し、カートにショックコードで固定していたら、ショックコードのフックが砕け跳んだ。樹脂製のフックだからいつかこうなるとは予想していた。

 実は、20代の頃、バイクで沖縄へ行った事があり、そこで荷物を固定するショックコードの樹脂製フックが砕けて、荷物が固定できずに少し困ったことがあったのだ。そんな経験もあり、ショックコードは2本持つことにしている。それが役に立つとは。。

 12時頃にカレーのおいしい喫茶店に入り、マスターに電車の時間を教えてもらい、カレーとコーヒーを楽しんだ後、近江中庄駅へ向かう。徒歩で10分くらいの距離だ。ここは無人駅でキップを買う事が出来ない。そのまま、電車に乗り込み永原で降りる。電車が空いているとは言え、ホームと電車の間に隙間があるので、荷物を電車から降ろす瞬間はいつも緊張する。それが終わっても、永原駅の長い階段が待っている。この駅は改札らしいものがないので、自己申告で窓口で運賃の精算をした。

 車に荷物を積み終えたのは午後1時。完成度や洗練度が高いツーリングではなかったが、今はそれをいつかするための準備期間だと思っている。




永原からマキノ


 

 永原駅に車を止めて、マキノ駅近辺までを紅葉の琵琶湖を漕いでみた。天気予報では晴れだったのに、この日は一日曇っていた。

 朝、起きると寒く行くのをためらったが今行っておかないと、紅葉の時期を逃してしまうし、これから先どんどんと寒くなっていくので、今日がチャンスだと思いまだ暗いうちに家を出た。


 川の近くの道端でカヤックを組み立てて、10時頃に水上へ出る。

 この川は狭くて水深が浅いけど、透明度は高かった。いつも琵琶湖で漕ぐ場合は、砂浜からの出艇なので、乗り沈しないか少し心配だった。

 パドルは電車行なので、TNPのアルミシャフトでナイロンブレイドの四分割を使った。つまり、重たいパドルだ。

 15分ほどで、河口から琵琶湖へ入る。川を抜けて琵琶湖へ入るというのは、なかなか新鮮な感じがする。琵琶湖の状態がどうなっているか分からないので、ドキドキする感もある。河口を抜けたら、風が強く三角波が立っていたなんてことになったら、どうしようと思ったり。

 河口を過ぎて、回廊状の川から一気に広い空間が広がる。


 

 大浦湾(っていうのかな)から、右側が海津大崎、左側が葛篭尾崎。今日は一日こんなどんよりとした天気だった。写真には写っていないけど、釣りを楽しむ人のボートが何艘か浮かんでいる。

 寒くなってきたので、フリースを着ることにする。着替えるには、PFDを外さないといけないけど、そのわずかな時間に沈したら困るなあと思いながら、素早く慎重に水上でフリースを着込む。

 


 大浦の集落を出て少し行くと、右側はホテルや別荘地になっている。僕はこのあたりでは泊まったことがないけど、湖畔のリゾートという感じだ。紅葉している木もあり、秋のムード満載だ。曇っているのがイマイチだけど。


  11時30分頃に、上陸し、少し早めの昼食にする。海津大崎の岬の先端近くなので、開けた光景が広がっている。この辺りの浜は、砂利が多く。波打ち際では、小石がシャリシャリという小気味良い音を鳴らしている。この辺りの水はとても透明度が高い。
 

 海津大崎の先端辺りは、岩礁地帯になっている。岩場に、紅葉している樹木が張り付いていて、天然の日本庭園のようだ。そもそも、日本庭園が自然を模して作ってあるものだから、こちらがオリジナルなんだろうけど。

 曇りなので、紅葉のきれいな色が写真に出なくて残念だ。


 この辺りまで来ると、腕の疲れがそろそろ限界に近い。ブレイドの幅の狭い軽いパドルなら、疲れが少ないのだろうけど。


 海津の集落沿いに入っていくと、こんな幟が何箇所か立っている。

「重要文化的景観の日(海津・西浜・知内の水辺景観)」と書いてある。今日がその日なのかな。


 こんな花が浮いていた。秋に咲く木の花。何の花なのだろうか。何もない秋の終わりの浜辺に、この色はよく映える。

 1時15分頃に、マキノの湖のテラスに到着する。西浜には、親子連れが一組と、出艇しようとしている赤いタンデムのファルトに乗り込んだ2人、あとは誰も居ない。マキノ駅から永原に向かう列車は、1時間に1本しかない。この時間帯は、毎時51分発だ。かなり急げば1時51分に乗れるだろうけど、そこまで急がなければならない理由もなく、2時51分の電車に乗ることにした。

 船体布をゆっくりと乾かし、時おり、ベンチに座って琵琶湖を眺める。先ほどの赤いファルトは海津大崎の方へ向かい、どんどん小さくなりやがて視界から消えて行った。ゆっくりとしたパドリングだが、まるで2人の腕が糸で繋がっているかのように連携して動いている。美しいフォームだ。

 電車に乗る時間を1本遅らせたので、時間を持て余すかと思ったら、そんなわけでもなく、すぐに2時半になった。湖のテラスからマキノ駅までは10分もかからなかった。マキノ駅も永原駅もエレベーターがないのがきつい。

 以前から、漕ぎたいと思っていたこの区間をこの日は漕ぐことが出来て満足だった。






湖北の小島、2回目


 前回、やり残したことがあったので、また湖北の小島を巡って来た。

 出艇位置は、前回と同じ場所。夏場に比べると、随分涼しくなっているはずだけど、それでもカヤックを組み立てるときは、汗だくになる。おそらく、早く湖上に出たくて、気が焦っているんだろうと思う。本当は焦らなきゃならないことなんて何もないのに。のんびりとした気分で組み立てる事が出来るようになったら、精神面で新しいステージに立つことが出来たということだろう。まだまだ修行が足りないな。

 さてさて、そんな状態で組み立てが終わり、11時に出艇する。


 
 ここに前回訪れたのは10月20日だから、9日間経過している。心成しか、菱の絨毯の面積が狭くなっているような気がする。

 前回、撮れなかった写真を撮るために、右前方の1番目の島へ向かう。これが、前回叶わなかった事の一つ。

 詳細は、こちらのブログに書いてあるので、興味があれば読んで下さい。


 この日のこの辺りは、場所によって水質や水の流れがが大きく変わる。3つの小島と岸部の間は、波がほどんどなく湖面が鏡のようになっているが、水は濁っている。小島よりも沖に出ると、水の透明度が増すが、小さな波が立っている。

 1時間ほどかけて、3島をぐるりと周った後、まだ時間があるので、前回は北へ向かったが、今回は南へ向かうことにする。



 まるで剣山のようなポールがたくさん刺さっている。ポールの切れ目を見つけ、そこを通過する。


 左側のマングローブのような雑木林に中に、小さなビーチが点在している。この雑木林は、湖岸道路と琵琶湖の間に存在しているが、それらの小さなビーチは、湖岸道路からは薮が深いのでアクセスが出来ない。

 漕いでいると、「ボチャン」という音がして、バウ側のデッキに水がかかり、船底に振動を感じた。かなり大きな魚が、カヤックに体当たりをしてきたようだ。

 
 ちなみに、この白い物体が、僕が愛用しているGPSロガーの「i-gotU GT600」だ。このGPSロガーは、緯度経度を記録していくだけのものなので、帰宅したらPCにデータをダウンロードして、「轍 Wadachi」というソフトを使用して、HTMLページを作成している。このソフトはフリーウェアだが、とてもありがたいソフトだ。



 しばらく漕ぐと、左側に、湿地を保護するためなのか目的は分からないが、柵が出現した。そろそろ、どこかの浜辺に上がって、昼ごはんにしようと思っていた頃だし、この柵はかなり続きそうだし、景観的にもよろしくないので、引き返すことにした。そう思った頃に、大きな魚の死体が浮いているのを発見した。パドルのブレードよりも大きな魚だ。さっき、カヤックに体当たりしてきたのも、これくらいの大きさなのかもしれない。

 途中、水鳥の死体が浮いているのも見た。そう言えば、海津大崎では、イノシシの死体も見たな。幸い、人間は今までは見ていないが。。

 魚も水鳥もイノシシも撮影はしたけど、掲載はパス。

 狭い浜辺で、立ったまま、おにぎりを食べる。地面を見ると、貝殻がたくさん落ちている。20分ほど休憩して、岐路に入る。



 夏の名残が、ところどころに。


 再び、島の周囲を周ってみる。3番目の島に、前回は気が付かなかった史跡を発見した。この史跡の写真を撮ろうと思うと、上陸しないと撮れない。雑草がたくさん生えているし、アシナガバチがたくさん飛んでいるし、鵜の糞で周囲は真っ白だし、写真を撮るのに少し苦労した。

 これを見つけるのが、やり残したことの2つ目。

 この日は目的を達したので、満足だった。
 

 振り返ると、見渡す限り、琵琶湖がたゆたうように水を蓄えている。

 漕いだ距離は7キロ弱。
 琵琶湖の水位は、マイナス15センチ。



 そう言えば、最近、市の美術展に琵琶湖の写真を出展したら入選した。風景は入選しづらいのだけど、運が良かったのだろう。


湖北の小島


   今日は10時くらいに琵琶湖へ着いたけど、出艇ポイントを探すのに、時間を費やしてしまった。水草が茂っていたり、漁港のコンクリートの場所だったりで、なだらかな浜辺はこの辺りはほとんどない。それでもなんとか、組み立てるスペースと出艇出来そうな場所を見つけた。その場所は、過去に何度も写真を撮りに来たことがある場所だが、カヤックと写真撮影では、周囲への注意力がまるで違うので、そこから出艇出来るとは気がつかなかった。

 今日のこの場所は、僕にとって大きな意味を持つ。琵琶湖に訪れるきっけかになったのは、この場所からの風景を見たからだ。カヤックに乗り始めるずっと前、15年くらい前になるだろうか。ここで白鳥を見たり、水中林のある小島の風景写真を撮るのが好きで、よく通っていた。その頃からずっと、ここらに点在している水中林は、近くまで行くとどうなっているのだろうと思っていた。それを、今日見ることが出来た。

  カヤックを組み上げることが出来たのが11時頃だった。初めて漕ぐ場所で、しかも一人だということもあり、パドルフロートとスペアパドルも用意した。沖で沈した場合、パドルフロートをうまく使って再乗艇出来るかは心配ではある。昨年の夏に一回練習しただけだからだ。でも、この日は風もほとんどなく、波も穏やか。心配はない。



  カヤックに乗り込み、最初の島へ向かい漕ぎ出すが、水面は水草がびっしりと生えている。どんな植物かと思ったら、菱だった。大量に生えている。知人に忍者がいたら、持って帰るのだけど。このブログを読んでいるあなた、もし、あなたが忍者だったら、ここへ来れば一生分の撒き菱が手に入りますよ。

 船体布の底から、草を引きずる感触が体に伝わってくる。



 
 数分間、漕ぎ進むと菱の平原は終わり、目的の小島が見えてくる。写真の3島の周囲を水上散歩するのが主目的だ。遠くに竹生島が見えているけど、こちらは今日は行きません。まずは右側の島へカヤックを進めることにする。





  右舷遠方に白鳥を発見。そう言えば、カヤックを組み立てている時に白鳥の「こーこー」という声が聞こえていたのを思い出した。そろそろそういう季節だと思い、今日は望遠レンズを持参している。10枚以上撮影したが、動くものを撮るのはなかなか難しい。





 最初の島が近づいて来た。細長い島だ。木が水中から生えているわけでなく、陸地もちゃんと存在している。琵琶湖の水位によって、陸地の面積はかなり変わるのだろうと思う。この辺りは、岸から離れているにも関わらず、かなり浅い。

 

 水面に映りこむ木々の姿がとても美しい。最初の島の魅力は、線状に並んだ木々の姿だろう。




 一周して、南側から順光で撮影してみる。島の周囲を丹念に探っていくと、いろいろな宝物(光景)を発見することが出来る。




 次に3島の中では、岸から一番遠い2番目の島へ向かう。



















 ←こいつが犯人(犯行内容については後述)


 眠っているのか、かなり近寄っても逃げない。この鳥は、琵琶湖では歓迎されない鵜だ。

 2番目の島は小さいので、すぐに一周出来てしまう。次に3番目の島へ向かう。2番目の島と3番目の島の間は、とても水深が浅く、歩いて行けそうなくらいだ。




 3番目の島を一周する。この島は、きれいではない。3島の中では、一番大きな島だけど、それだけに漁業者の道具が置いてあったり、鵜の糞で樹木が真っ白に変色している箇所が見られる。汚い場所は撮影していないので、写真はないが、樹木が真っ白になるほど、鵜の個体数は増えているということだろう。

 もしかして、この3番目の島が、カヤックガイドのお姉さんが教えてくれた「飯開島」だったのだろうか。僕の探し方がまずかったのか、石碑のある場所は分からなかった。


 交換レンズはこんな感じで無防備にデッキに置いている。15年程前に買ったものなので、今さら濡れて壊れたとしても未練はない。機材はどうでもいい。手元に交換レンズを置いておかないと、シャッターチャンスを逃がしてしまう。




 島の北側に、こんな倒木があった。これを見ると、根は地中に向かって伸びずに、表面で広がっているようだ。そのため、倒れやすいのだろう。おそらく、水が乏しい環境であれば、水を得るために根が地下に向かって伸びるのであろうが、ここに生える木は水に困るようなことはない。しかし、それがこの木にとっては仇になったようだ。それでも、この木はまだ生きている。

 3島の中で2番目の島が良かったので、そこで昼食にしようと思い、2番目の島へ向かう。





 
 この日は、艀を牽引しているタグボートが、往復しているのを何度か見た。最後まで見ていたわけではないけど、つづら尾崎に向かっているのだろうか? かなり大きな資材を運んでいるようだけど、もしかして、人目につかない場所で、秘密要塞でも建設しているのかもしれない。




 2番目の島に上陸する。「島に上陸する」というのは、ロマンに満ちた特別な響きを持つ言葉だな。例えそれが、徒歩で一周するのに1分も要しない小島であったとしても。いや。それだけ小さな島ならなおさらか。

 上陸後、カヤックが流れていってしまわないように、慎重に陸に引き上げておく。もし、カヤックが流れて行ってしまったら、この島で、しばらく暮らさないといけないはめになる。島の陸地を見ると、猟銃の薬きょうや、小さな鳥の骨なんかが落ちている。もしかして、漂流者がカモを撃って食べた跡か。(そんなわけはないが。。)
 
 あれ?でも、ここって猟をしてもいい場所なのかな?


 念のため、携帯電話を取り出して電波状況を確認したら、使用できる状態であった。もしかしたら、携帯の電波って、予想以上に広範囲に届くのかな。

 昼食の時くらい、座ってゆっくり食べたいものだが、乗艇中はずっと座っているので、立って食べていたほうが体が楽だ。狭い島を歩きながら、おにぎり3個をたいらげる。

 3島を巡るという目的は達したけど、引き返すには早いので、北へ向かってみることにする。



 まだかなり距離があるというのに、水鳥たちは、いっせいに逃げてゆく。僕のカヤックが1艇近づくだけで、何千羽に影響があるのだろうか。水鳥たちを驚かせるのは本位ではないが、ある程度はやむをえない。愛鳥家にここを通るなと非難されても困る。もちろん、明文化された条例があるのならそれに従うのだが。。

 そうは言っても、水上交通権があるから法令で禁止されていなければ、どこでも自由に通行するぞという厚顔さはさすがに持ち合わせていないので、野鳥センターの随分手前で引き返すことにする。野鳥センターのすぐ前には白鳥が集まっている。それを観察している人たちもいるだろうから、邪魔にならないように、南へ進路を返すことにする。



 また、おもしろいもの発見。魞を構成する杭だろうか。リズミカルに並んでいる。それが、水面でユラユラして楽しい感じだ。

 しばらく進むと、また菱の平原を進むことになる。カヤックの舳先近くや、パドルを水に刺しいれる瞬間、ボチャンという大きな水音がすることがある。それも、かなりの高確率で。菱が茂っているのでよく分からないけど、水深が浅いので、パドルで驚いた魚が下に潜ることが出来ずに、水面に出てくるのだろう。

 この日、漕いだ距離は5.5キロ。琵琶湖の水位はマイナス16センチ。
島を探った日だった。


 カヤックを撤収し終わった後、2番目の島の向こうに夕日が落ちてから、写真撮影をした。




「菱の平原、2番目の島、竹生島、そして秋の雲」





清少納言ではないが、「秋は夕暮れ」とはよく言ったものだ。

秋ほど空模様が美しい季節はないと思う。


撮影メモは、こちら。


 
菅浦から葛籠尾崎へ



 芝木好子の「群青の湖」という小説を読んだ。詳細は省略するが、菅浦から見る琵琶湖の光景が描写されているのが印象的だった。菅浦は写真を撮りに何度も訪問しているが、カヤックで漕ぐのは今回が初めてになる。

 葛篭尾崎の付け根の西側に位置するこの集落は、他の集落からかなり距離がある。数十年前までは、陸路はなく、他の集落への交通手段は水路によるものであったそうだ。
 この集落の西側に、須賀神社がある。北に向かって、真っ直ぐな参道が山を登るように伸びている。参詣は土足厳禁であり、素足で参道を登らなくてはならない。

 この日は9時に到着した。春祭りだと思うけど、神輿の用意や飾り付けが行われていた。カヤックは、僕以外では、リジットのシーカヤックのタンデム艇とシングル艇が1艇ずついた。僕が組み立てをしている時に、その2艇は漕ぎ出して行き、すぐに岬の向こうに消えていった。おそらく、竹生島へ向かったのであろう。
 
人の暮らしが間近にある浜は、とてもいいなあと思う。





 こちらも、準備が整い10時くらいに出艇した。この日の天候は風はほとんどなく、波も穏やか。でも、黄砂の影響なのか空気はクリアではない。遠景がぼやけて見える。写真撮影には向いていない。まずは、集落に沿って、水面にゆらゆらと映りこむ家並みを眺めながら漕ぎ進むことにする。西の方角にある山を見ると、山頂近くに雪が残っている。





 しばらくすると民家がなくなり、畑がわずかの間続く。もう終わりかけの梅の花がまだ咲いている。集落とは少し離れた場所に、崩れかけた民家が建っている。ほどなく、湖沿いのハイキング道は、山の方へ向かうようになり、水際の道は途切れる。その後は、岩が多くなる。苔むした岩肌を背景に咲き始めた椿の赤が印象的だ。数週間で、満開を迎えるだろう。

 湖に映りこむ稜線が、造形的な美を醸し出している。僕が水上で写真を撮るときに、風景写真の必需品とも言える偏光フィルターを用いないのは、水面に映りこむ景色を楽しみたいからだ。






 最初の岬を曲がりこむと、竹生島が右舷に現れてくる。先ほどの2艇のシーカヤックは、既にどこにも見えない。この辺りの葛篭尾崎は岩礁になっていて、ところどころに岩が水面から突き出している。それらは、目視が容易なのだが、水面下に潜っている岩が曲者だ。気付かずに、岩に乗り上げてしまうと、船体を傷つける可能性があるので、それを気遣いつつ、漕ぎ進む必要がある。

 葛篭尾崎は、全ての場所が岩礁地帯になっているわけでもなく、浜辺になっている場所もある。岩礁と浜辺が交互に現れるような地形である。葛篭尾崎は、そのものが岬であるが、仔細に湖岸をたどっていくと、いくつもの小さな岬とその間に浜辺が存在していて、岬の突端が岩礁になっているようである。その小さな岬の間の浜辺近くで、ニホンアナグマを目撃した。





 最初は、タヌキかと思ったが、どうも違う。冬眠から目覚めたばかりなのか、動作が鈍く、何枚か撮影することが出来たので、自宅へ戻ってから調べたら、ニホンアナグマであることが判明した。この日は、あいにく望遠レンズを持っていなかったので、レタッチソフトで切り出しを行った。他にも、鹿を見たが、これは一瞥しただけで、山へ駆け上がって行ってしまったので、撮影する暇がなかった。

 水面下の岩に注意しつつ、次の岬を回り込み、しばらく進むと何かの小屋があった。歩道に面しているのであれば分かるのだが、おそらく小舟でしか来られない場所に、何でこんな構造物があるのだろうか。秘密結社が、陰謀を企てるための施設なのだろうかと妄想しつつ、パドルを左右に反し漕ぎ進む。




 11時30分になったので、浜辺にカヤックを引き上げて、少し早い昼食にする。この日のメニューは、おにぎり3個。行きがけに、総菜屋で買ってきたものだ。高菜のおにぎりを、一口頬張った瞬間に、ふいに強い風が吹いた。嫌な予感がしたので、急いでたいらげて、カヤックに乗り込む。ここから状況は一変する。

 天気予報では、風は穏やかなはずなのに、風はどんどん強くなり、止む気配も弱まる気配もない。出艇地まで5キロほどの距離を戻らなくてはならない。急いで力いっぱい漕ぎ進むが、風が強くてまっすぐに進まない。岬と岬を直線でつなぐように、最短距離を漕いで帰りたいのだが、沈した時の事を考えると沖に出てはまずいので、岸に近いところを漕ぐようにするが、風の影響で進行方向が沖に向かってしまう。左側が長くなるようにパドルを持ち替えて、進路を保つようにして、必死に漕ぐ。

 少し怖くなってきたので、一度岸に上がって、浜辺を歩いてカヤックを引っ張るが、岩礁地帯に差し掛かると歩くことは出来ないので、再びカヤックに乗り込む。沖に流されないように注意し岸に近いところを漕ぐが、岩礁地帯ではそれが仇になり、ついに座礁してしまう。脱出できないと、どうしようもないので、カヤックから片足を船外に出して、岩を蹴ろうと試みるが、岩肌がヌルヌルでまったく効果がない。重心を移し過ぎると、バランスを崩して沈する可能性があるので、足で岩を蹴って脱出するのは諦めた。
 ここで、あまり手こずっていると、船体布に穴が開く可能性がある。いや。もう、この時点で穴が開いたと思っていた。もしそうなら、ビルジポンプで掻き出しつつ、進むしかない。それよりも、今は、座礁した状態からの脱出が先決である。

 普段使用しているのは、グラスファイバー製のパドルなので、このパドルで岩を突くのは避けたかったが、もし、損傷してしまっても、予備のパドルを今回は持って来ているので、敢えてパドルで水面下の岩を突き、何とか脱出した。結果的にパドルが傷むことはなかった。

 次に心配なのは、船体布の穴からの艇内への浸水だが、あれだけ底を擦ったにも関わらず、穴は開いていなかったようで浸水はなかった。しかし、まだまだ安心出来る状況ではない。出艇地までは、かなりの距離がある。波も高くなってきた。膝に力を入れ、しっかりとニーグリップをしてバランスを取る。バウ側のデッキに波が乗る。アルピナのタンデム艇はオープンデッキだけど、コーミングカバーをしておいて良かった。もし、コーミングカバーをしていなければ、波が進入し艇内が水浸しになるところであった。

 そんな状況で、必死でパドリングを繰り返し、湖岸にハイキング用の歩道が隣接しているところまで戻ってくることが出来た。ここまで来たら、いつでも陸に上がる事が出来る。しかし、出艇地まではまだ距離があるので、もう少しがんばって漕ぐことにする。それから15分くらいして、出艇地近くの浜辺に辿り着き、カヤックを引き上げた。その直後、湖の西の方を見ると、先ほどの2艇のシーカヤックが戻ってくるのが見えた。荒れた湖でも、シーカヤックの方がぐいぐいと進めるのだろう。見ていると、あっという間に岸に到着していた。

 カヤックを、かたづける前に乾かそうと思い、裏返して穴が開いていないか確認するために、船体布の底の部分を確認する。やはり、傷が付いている。あれだけ岩でこすったのだ。無傷でいられるはずはない。キールに沿った部分は、船体布が二重に貼り付けてあり、補強してある。その一枚目に穴が開いていた。二枚目の布までに傷が到達しなかったから、穴が開くことを免れたのだ。幸運に感謝しなくてはならない。風が強いせいか、すぐにカヤックは乾いてしまった。

 この日の出来事を振り返って、そもそも数キロに渡って人気のない場所に、僕の力量で単独で航行するのは、無謀な行為だったのだ。これからは、危ないと思ったらいつでも、陸に戻れる環境でカヤックを楽しむことにしよう。

 船体布の補修をしなくてはならない。それにしても、船体布が二重張りになっている部分なので、開いた穴から、二枚の船体布の間に水が入り込んでしまっている。これは、完全に乾かすことは出来ないので、ある程度見切りをつけて、補修しなければならないだろう。



おぼろな太陽




 今年に入って初めてカヤックに乗る。ほぼ2ヶ月ぶりになる。この日は、天気予報では晴れだったのに、一日中雲っていた。雨は降っていない。風もほとんどない。冬にカヤックに乗るのは始めての経験だ。寒さ対策として、グローブをネオプレーン製のものに変更した。昨夜、ホームセンターの釣具コーナーで1000円くらいで買った。足元も、ネオプレーン製のオーバーソックスを、これも昨夜、ワークマンにて600円で購入した。それでも寒ければ、レインウェアを着ればいいと思ったが、寒さを感じることはなかった。






 おぼろげな光を照らす太陽の元、長浜ドーム近辺の湖岸から出艇し、天野川を目指す。天野川河口の岬には、ケンナの木がある。僕が勝手に名前を付けているだけだが、何でケンナなのかというと僕が好きな写真家のマイケル・ケンナが、撮影した木だからだ。彼は季節を変えて、何度も撮影していたようだ。





 グローブの保温性を確認するために、人差し指を水に浸してみる。ネオプレーンの断熱効果で、冷たさが直に伝わってくることはない。グローブは濡れているのであろうが、冷たくて手の体温が奪われるような感じはしなかった。40分ほど漕いで、ケンナの木の岬に到着する。この日は、どんよりとしているので、写真を撮るには、あまり適していない。






 岬から、どこに向かおうかと迷ったけど、天野川を遡ってみることにした。琵琶湖に注ぐ川に出会ったら、可能なところまで、漕ぐことにしている。「可能なところまで」というのは、石がゴロゴロしてきたり浅くなったりして、艇を傷める可能性が高くなったら、そこで引き返すという意味だ。

 この川が天野川だと気が付いたのは、帰宅して調べてからのこと。旧山東町役場周辺では、たくさん蛍が出る川だ。ずっと以前、見に行ったことがあるのを思い出した。

 堤防には、まだ雪が残っている。葉が落ちた樹木の枝の形状が水面に映り込む姿がとても美しい。





 
 しばらくすると、この川も大きな石がごろごろしてきたので、引き返すことにする。写真の中央部が天野川が琵琶湖に注ぎ込む河口になる。




 2時間ほど漕いで、出艇位地へ戻る。太陽は相変らずおぼろげなままだ。






 今日はせっかく写真を撮ろうと思い、フィールドカメラを用意してきたのに、フィルムを装填することはなかった。でも、せっかくなので、記念撮影をしておくことにする。

 この季節、気温が低いせいか船体布が硬く感じる。水滴を拭きあげて、カップラーメンの昼食を食べている間に、乾いてしまった。空気が乾燥している故か、こんな曇りの日でも乾くのは早い。

 この出艇場所の湖岸には、コーヒーのおいしい、ある国の名前がついた喫茶店がある。数年前に亡くなった僕の写真の師に教えてもらった店だ。その師は、筋肉が萎縮していく病気で亡くなったのだが、体がまったく動かなくなっても、車椅子を奥さんに押してもらい、写真を撮っておられたようだ。僕もそんな生き方が出来たらと思う。

 カヤックに乗った時の昼食は、自分で作ることが多い。店に入る事はない。ファルトボートは、準備と後片付けが結構大変なので、その大変さに比べたら、お湯を沸かしてカップラーメンを作ることなんて、大した手間ではない。

 この日の漕行距離は8.3キロ。久しぶりだったせいか、体のあちこちが痛い。ジム通いをしているけど、カヤックを漕ぐための体を作るには、結局のところ、カヤックを漕いで作るしかなさそうだ。