〜カヤックで琵琶湖を旅するブログ〜
<< 秋からのウェア | main | 秋の水郷 >>
針江水郷

 



 10月23日土曜日、湖西の針江水郷へ出かけた。7時30分に自宅を出発して、9時20分に到着した。琵琶湖岸には、あちこちにトイレ併設の無料駐車場があるが、今回もそういった類の場所に駐車した。車から湖までは至近距離なので絶好のロケーションだ。車を降りると、京都の山科から来たという、おじいさんが話しかけてきた。その人は、三脚を持っていたので写真撮影が目的かと思ったら、どうやら絵を描きに来ていたようだ。

 僕が車からカヤックを取り出して、フレームを組み立てていると、「ボートですか?」と尋ねられたので、「カヤックです。」と言うと、「カヤックって、水中で回転するやつですよね?」という返事が返ってきたので、「えっ!?そんなに頻繁にそんなふうになるものじゃないですよ。僕は、今年始めたばかりだけど、まだ一度もそういうのは経験していません。」と答えた。世間のカヤックのイメージは、多分、そうなのだろう。僕も、始める前はロールしている姿がカヤックのイメージであった。職場では、「カヤックってヘルメット被ってやるやつでしょ?」と言われたこともある。どちらもファルトボートで、のんびりと湖上散歩するイメージではない。やはり、世間では、カヤックは激しいものだと思われているようだ。

 9時20分に到着したので、10時には出艇出来るかと思ったが、写真を撮ったりしていると10時20分くらいになってしまった。そもそも、カヤックの組み立てだけなら20分もあれば何とかなると思う。時間がかかるのが、エアスポンソンや浮力体に空気を入れたり、食料や写真機材をカヤックに積み込んだり、予備のパドルやビルジポンプをセットしたりコーミングカバーを被せたりという、一つ一つの細かな作業に時間を取られてしまうのだ。まあ、それは仕方がない。

 前回までは、サンダルと半ズボンで、水の中にジャバジャバと入っていたけど、今回から、前回書いたように、長ズボンと長靴である。上半身は、スポーツ用の長袖Tシャツの下着を買い、さらにその上に化繊の長袖Tシャツを着た。これって、すごい。おそらく、綿製品であれば、汗でビショ濡れだったと思うが、常にサラサラした状態である。素材としてはラッシュガードに似ている。近年は、安価でこういうものが手に入るようになって、ありがたい。

 さきほどの、絵描きのおじいさんに「行ってらっしゃい。」と送り出されて、漕ぎ出す。湖底に水草が生えている。パドルに絡みつき、漕ぎ辛い。この辺りの水の透明度はあまり高くない。ほぼ無風状態なのに、速度があまり出ないのは、湖水の流れによるものだろう。480スペリオだったら、もっと速く漕ぎ進めるのだろうか?進行方向の左舷にキャンプ場がある。夏の時期に比較すると客足は少ない。キャンプするのであれば、今の時期の方が涼しくっていいような気がするのだけど。そのまま、岸沿いに漕ぎ進む。この一ヶ月くらい風邪をひいていて、ろくに体を鍛えていなかったせいか、すぐに腕が疲れてくる。休みながら、漕ぎ進む。ちょっとした岬を過ぎた辺りに白い鳥を発見。コハクチョウだ。そうか。そろそろ飛来の時期なのだ。そこにいたのは4羽ほど。首のグレーがかった、まだ若いコハクチョウもいる。こちらの存在に気がついたのか、鴨達と一緒に、飛び立っていった。僕は、すかさずカメラを構えた。この日、望遠レンズを持ってこなかったのが悔やまれる。これからの季節、冬鳥で琵琶湖は賑やかになる。僕は、彼らを追い回したり、驚かしたりはしたくはないが、同じ湖面に存在している以上は仕方がない。いくらこちらに危害を加える気はなくても、彼らは身を守るために逃げ去っていく。でも、そうでなくてはならないのだ。





 水鳥たちが飛び去った後、岸沿いを漕いでみる。この辺りの岸辺は、陸地からはアクセス出来ないため、人の出入りはない。カヤックだからこそ辿り着くことが出来る岸辺だ。この岸辺近くの陸地は、土ではなく、葦や木の根等の堆積物で形成されているようだ。このような性質の土壌は、湖水の汚れをこし取るようなフィルターの役目を果たし、湖水を浄化しているのだろう。人の心にもこういうフィルターがあればいいのにと思う。ずっと以前は、琵琶湖の湖岸のほとんどの場所が、こういう状態だったのだろう。岸辺の薮の中から、ガサガサという音が聞こえた。まさか、熊!?今年は山のドングリが不作らしく、食料を求めて熊が山から里へ降りてきている。この場所で熊と遭遇しても不思議はない。でも僕はカヤックで湖上にいる。まさか、ここまでは来ないだろうと気を取り直した頃に、ガサガサの正体が薮の中から飛び出してきた。つがいのイタチだ。イタチを熊だと想像するなんて、僕は、何て臆病なのだろうか。その臆病さがたたって、未だに、沖へカヤックを漕ぎ進む事が出来ずにいる。その理由の一つに、カヤック仲間がいないので一人で漕ぐことが多いということもあるのだが。だって、僕のアルピナ2−430の船体布には、「カヌーは一人でしないでください。」と書いてあるのだから、危険は冒したくはない。

 そりゃまあ、家族や友人を乗せて一緒に漕ぐことはある。でも、その時はレジャー気分だ。それはそれで、もちろんとても楽しく有意義な時間ではある。一人で漕ぐと、自分の心がこの世界と直接対峙出来ている気分になる。漕いでいるうちに、心が研ぎ澄まされたような気持ちになってくる。そんな時には、素晴らしい光景を見ることが出来る。その光景は、おそらく、普通に存在するものだと思う。それを素晴らしく感じ取る事が出来るのは、僕自身にそれを感じ取る心の準備が出来ているからなのだ。

 30分くらい漕いで、針江大川河口の水門を潜る。水門を抜けたらすぐに半分くらい沈没している船があった。どこの水郷でも、沈没船は、必ずといっていいほど存在する。もはや、沈没船は水郷の必需品であるとさえ思ってしまう。川を遡る形で漕いでいくわけだが、流れが緩やかなので、手漕ぎのカヤックでも、充分、川を上っていける。すぐに、水郷ムード満点の場所に到着した。葦が茂っている。名前は分からないけど、水草がたくさん生えている。カイツブリの巣がある。しかし、本当に素晴らしい水郷風景があるのは、限られた区間なので、その間をカヤックで何度も行ったり来たりして、何枚も写真を撮った。水は澄んでいてきれいだけど、川底にはゴミが落ちている。空き缶やビンが目立つ。これらのゴミは、長い水郷の歴史の中で、ここ数十年で堆積していったものだと思われる。それ以前には、そもそも、ゴミになるような空き缶や空きビンなんてものは、存在しなかったからだ。




 
 さらに針江大川を漕ぎ上ってみる。僕のカヤックの前を、一羽の鵜が泳いでいる。知内川や姉川と違って、魚影は少ない。川の規模が小さいということもあるんだろうけど。国道と針江大川が重なる辺りで、引き返すことにした。帰りは、ひたすら下っていくだけである。河口の水門をくぐり、琵琶湖へ出る。沖に大きな作業船が停泊している。まるで、要塞だ。気分は、要塞めがけて漕ぎ進む某国の諜報部員である(笑)。要塞見学をした後、出艇場所まで戻ることにする。さっきまで晴れていたのに、曇が広がってきた。





 風は相変わらず吹いていない。とても静かな湖面だ。ほどなく、出艇位置に戻る。ここにも、杭が何本か突き出ている。杭から、別の木が生えている。鳥が、木の種子が入った糞を落として、それがそのまま発芽したのだろう。1時30分くらいに上陸したら、絵描きのおじいさんが、帰り支度をしていて、僕に「おかえり。」と声をかけてきた。少し、話をして別れた。その後、カヤックを乾かす間、お湯を沸かし、ラーメンを作って昼食にする。

 この日、漕いだ距離は5キロ弱だと思う。湖の上には道があるわけではないので、自分の正確な軌跡が分からない。GPSロガーを近いうちに買おう。もっと船速があるカヤックなら楽に進むのかな。

 

COMMENT









Trackback URL
http://waterland.o-e.main.jp/trackback/17
TRACKBACK