〜カヤックで琵琶湖を旅するブログ〜
遠雷を聞きながら
 最近、カヤックに限らずいろいろな事が億劫になり、趣味の活動に時間を割けずにいた。せっかくの3連休だということもあり、わずかな時間でも自分を奮い立たせてカヤックに乗ろうと思いマキノへ向かった。趣味の活動なのだから、気が進まないときはやらなければいいのだが、まずは行動に移すことで気分が変わるという事を、過去に何度も経験しているからだ。
  マキノへ向かう途中、何か所か雨が降っている区間があった。この季節は局地的に雨が降るので、マキノの天候がどうなのかは行ってみるまでは分からない。もしマキノに到着して雨が降っていたら、そこまで行ったのが無駄になってしまう。もちろん、寒くはない季節なので雨でもカヤックは出来るのだが、組み立てと撤収の作業が困難になるため、自ら進んで雨の日には漕ぎたくない。
  いつもの場所に2時ころに到着した。幸いなことに雨は降っていない。でも、辺り一面の空にはどんよりとした雨雲が立ち込めているし、遠くの方で雷鳴が轟いているのが聞こえてくる。雨で死ぬことはないが、雷の危険性には注意を払う必要がある。天候が急変したらすぐに撤収することを考えて、出艇地から遠くへ行くことはせずに、ゆっくりと漕ぐことにした。
  岸べたを漕ぐので、カヤックの装備は簡単なものにする。予備パドルもパドルフロートも装着しない。フレームを組み立てシートを装着し、浮力体を膨らませて前後に入れ、船体布を被せる。エアスポンソンに空気を入れてシーソックを装着したら完成だ。30分で準備完了。



 今回はツーリングというよりは、カヤックに乗って水遊びをすると言った方がいい。いつもは、安定性を増すためにバラストを積んでいるけど今回はそれも省 略した。最悪、沈しても岸はすぐに近くなので何の問題もない。余分な重量物を何も積んでいないせいか、船速がやたら早く感じる。それが楽しくてスピードを 出すようにどんどん漕ぐ。右舷に高木浜の湖水浴客がたくさんいるが、その中から、 「あのカヌー、速い!」 という声が聞こえてくる。漕いでいる間3か所くらいでそう言われたところをみると、やはり今日の僕は速いのだろう。しばらく漕いでいる間に雷鳴は聞こえなくなった。あとは雨さえもってくれればそれでいい。






 高木浜を過ぎて知内川河口へ向かう。以前、琵琶湖のアユの数が激減しているというニュースをどこかで見た。知内川は、毎年訪れているが、確かに今年はア ユの数が少ないような気がする。いつもは、川一面に魚影が確認出来て、カヤックのデッキに飛び跳ねてくるくらいの量であったのに、今年は少ない。なぜこん なことになるのだろうか。鵜が食べ尽くしたのか、それとも天候等の自然現象によるものなのだろうか。いずれにしても、好ましいことではない。







  知内川のアユの偵察が終わったので、出艇地に戻ることにする。途中で、妙な浮遊物を発見した。もしかして、これは、機雷?これにカヤックをうっかり接 触させてしまうと、爆沈の憂き目に会うかもしれない。琵琶湖には謎がいっぱいだ。


 1時間ほど漕いだ後、出艇地に到着したが、雨はまだ降りそうにない。この日は、この季節にやっておかなければならないことをする。それは、再乗艇の練習だ。実はアルピナ1−450で再乗艇の練習をするのは初めてだ。本来は、スプレースカートを装着して沈脱するところから練習するといいのだが、転覆した状 態でスプレースカートが外れないと、死んでしまうので、それは止めた。沈脱からの訓練は、複数で練習する時に挑戦してみようと思う。
 まずはカヤックを転覆させ、足が着かない深さまで行く。カヤックを起こしてパドルにパドルフロートを差し込み、再乗艇する。やはり1次安定性がア ルピナ2−430よりも低いせいか、再乗艇はしづらい。でも、再乗艇は問題なく出来そうだ。しかし、練習時には出来ても、本番で出来るかどうかは怪しい。 水面が荒れていたり、心理面が悪化していたりすると失敗する可能性は高いのだ。僕の3年間のカヤックツーリングの経験で、今のところ幸いなことに沈したこ とは一度もないけど、ずっと沈しないとも限らない。練習だけはしておいた方がいい。
  シーソックを装着していても艇内にたくさん水が入っている。アルピナの場合、構造的にスターン側が密閉されていないため、そこから浸水するのであろう。 艇内の水をビルジポンプで排出するのはかなり苦労するので、出来るだけ早く岸に上がって排水する方がいいな。  

 再乗艇は、かなりいい運動になる。数日間、筋肉痛が残った。

ライトな感覚のカヤックツーリング
 


 先週の「沖の白石」は、冒険気分満載のカヤックツーリングだった。暑くなる前に、家族で、レジャーとしてのカヤックもやっておこうと思い、久々にアルピナ2−430を登場させて、これに子供用シートを取り付けて、親子3人でプチツーリングをした。

 初夏とは言え、日射しはとても強い。SPF50の日焼け止めを肌が露出している全ての部分に塗りこんで、海津漁港近辺でカヤックを組み立てるが、天気が良かったということもあり汗だくになる。

 この日は、海津漁港から知内川付近まで漕いで、そこでサンドイッチを食べてまた戻ってくるという気軽な行程だ。風もなく、波も穏やか。ゴールデンウィークと夏休みの間で、しかも入梅前のこの時期は、一年で最も活動し易いのではないかと思う。

 出艇後、しばらくして、左側のエアスポンソンの空気が抜けていることを息子が気が付いた。組み立てる時に確かに空気を入れたはずなのに、全て抜けているのは、まさかどこかに穴が空いたのか??
 空気入れは車の中に置いて来たので、前後に浮力体も入れていることだし、この日はそのままで行くことにする。しかし、撤収する時に浮力体に穴が空いているのを発見した。荷物をグイグイと押し込んだ時に破裂したのかもしれない。そもそも、アルピナ2−430に3人乗るというのは、かなり無理があるな。

 帰宅後、エアスポンソンに空気を入れて数時間経過したけど、特に変化はない。それなら何で、空気が抜けたのだろう。

 カヤックに乗ってただ浮いているだけでも充分楽しいと感じさせる一日だった。
沖の白石

  「沖の白石」。カヤックに乗り始めた頃から、いつかここに来たいと思っていた。僕にとってそこは外国よりも遠い、世界の果てのような気がしていた。

 この日の同行メンバーはてっさんとS君(たまにてっさんのブログに登場)。同行メンバーというよりは、むしろ、このお二人に、白石まで連れて行ってもらったと言った方がいいかもしれない。

 岐阜から出艇場所の安曇川河口は、琵琶湖のちょうど反対側になる。交通量の少ない琵琶湖の北側を回り、集合場所の安曇川河口にある「琵琶湖こどもの国キャンプ場」へ向かう。9時ごろに到着し、カヤックを組み立てていると、ほどなくお二人が到着。S君と初対面の挨拶を済ませ、準備を進める。それにしても、駐車場から浜辺まで少し遠い。往復で5分以上はかかる。

 天気予報では、風速6メートルと出ていたので、もしかしたら今日は白石は諦めて沿岸ツーリングかもしれないと半分くらいは覚悟していたが、穏やかな極みの湖面だ。

 出艇位置からも白石は目視することが出来る。下の写真の棒の1.5センチくらい上にある点が白石だ。その右にうっすらと見えるのは沖島かな。



 準備が整い、10時40分に湖上に出る。この日は、てっさんは青いシーショア、S君は赤い480スペリオ、僕は黄色いアルピナ450という信号機さながらの色だ。チーム名は「シグナル」だな(笑)

 この日は、バラストに水タンクを15キロほど積んだ。アルピナ450に乗るのも4回目だということもあり、最初ほど不安定で怖いとは感じなくなってきた。慣れっていうのは大事だな。



 周囲が薄い霧で覆われている。それが湖面に映りこむので、上下感覚が薄れてくる。まるで雲の中を漕いでいるような感覚にさえとらわれた。いくら湖面が穏やかだと言っても、それは、その時がそうなのであって、5分後、10分後にはどうなっているか分からない。遥か遠方の白石へ向かい、パドルを動かし続ける。

 ふと左前方を見ると、多景島が見える。こんなに湖面が穏やかだったら、多景島も行けるのでは?と思い、てっさんに告げると、当初の計画よりも沖合いで遠方に行くのは、危険なのでやめなさい。とのこと。なるほど、その通りだ。時間が余ってカヤックに乗っていたければ、岸沿いで乗るべきだ。それに、目的を達成したら、欲張らずに条件が悪化しないうちに撤収するべきなのだ。これって、孫子の兵法にもあったような気がするな。。。


 1時間くらいで、念願の「沖の白石」へ到着する。誰が何と言おうと、ここは琵琶湖の聖域のような気がする。



 周囲をぐるっと漕いで回ってみる。見る方角によって、形状が変わるのがおもしろい。


 

 カロリー補給をしながら、15分ほど、白石の周辺をグルグルと回っていると、観光船が2隻通り過ぎていく。多分、船内では

「これが沖の白石でございます。」

等と、アナウンスが流れているのだろう。そうかあ。観光船でもここを見に来ることは出来るのだな。でも、自分で漕いで来るからいいんだよ。ここに到達するまでの1時間で、白石と対峙するための心の準備をすることが出来るのだし。



 観光船が去っていくと、大きなウネリが押し寄せてくる、そこにダイブするように垂直にカヤックを向ける。もし、横方向からこのウネリが来たらどうなるんだろう。やばいことになるのかもね。


 白石を堪能し、11時50分に帰路に着く。出艇位置から白石が見えたので、白石を目標にして漕げば良かったのだけど、白石から出艇位置は見えない。どの方角を向いて漕げばいいの??

 しかし、そこは、ちゃんと帰る方角を把握している、お2人に付いて行くことにする。

 今までは、岸沿いしか漕いだことがなかった。沖へ出るということが、どういうことか少し分かったような気がする。




 帰路はゆっくりと漕ぐ。時にパドルを動かす手を止めて、湖面に浮かびながら会話を楽しんだりしながら。






 カヤックが湖面に映りこむ姿がとてもきれいだと思う。奥には沖島が見える。


 風速6メートルという天気予報は外れたようだ。そのまま強い風が吹くこともなく出艇地に戻った。少し、休憩してからS君に480スペリオを試乗させてもらう。安曇川河口付近を乗ってみたけど、このカヤックいいなあ。安定感があるので、沈しそうな気がしない。パドル操作だけで、旋回が楽に出来る。次にカヤックを買うことがあったら、こんなのがいいかも。



 安曇川河口は、心癒される場所だ。ウグイスの声がこだましている。岸はマングローブみたいになっているし、流木もたくさん流れ着いている。そして、少量のゴミも。。。。

 この日の琵琶湖の水位はプラス16.3センチ、漕いだ距離は、白石までの往復と安曇川周辺で、距離14.4キロ。

 「沖の白石」を経験する前と後とでは、気持ちに変化が起きるような気がする。

中国人の友人とタンデム
 
 今年の4月に来日し、日本画の大学院を目指している24歳の友人とマキノでタンデムツーリングした。とは言いつつも、ツーリングと呼べるようなものではなく、知内川、高木浜、海津の石積みをゆっくり3時間かけて、観光するようなものだ。

 今回は、コンデジしか持って行かなかったので、画質には期待できません。

 彼は、カヤックは今回が初めてです。日本語は完璧には伝わりません。まあ、言葉の壁はあっても、なんとかなるでしょう。



 基本的なパドルの使い方を教えてカヤックに乗り込む。言葉が通じるとか通じないとか、国籍がどうとか、そんなことは無関係に、やはり最初はうまくはいかない。パドルを水に漬けてチャプチャプやっているような感じである。そんなわけで、操艇はほとんど僕がやらなきゃならないと覚悟する。漕ぎ始めは、波がそこそこ出ているので、少し漕ぎにくい。

 海津漁港から、南へ向かう。どうも、かなり喜んでいるようだ。それだけでも、連れてきて良かった。今日は少し水位が高いのか、知内川河口も、カヤックの底を擦らずに進むことが出来る。河口には、サギ、ユリカモメの大群がいる。知内川の小魚を捕食しているのであろう。

 知内川をいつものように遡ってみる。この川は、いつ来てもその度に、魚たちの様相が変化し飽きることがない。川底には、一生を終えたと思われる魚の死体がびっしりと並んでいる。



 水面近くには、弱りきった小魚が、力なく漂っている。友人は、その姿に見入っている。古今東西、この光景には、誰もが目が釘漬けになるのであろう。1000年前に、この川に船を浮かべた人も、1000年後にこの川に船を浮かべる人も、きっと、この生命のドラを食い入るように眺めると思う。

 その後、7月にキールアンセンブリーを紛失した知内川右岸にある浜辺で昼食を摂る。この浜は、これからキール紛失の浜と呼ぶことにしよう(笑)

 ゆっくりと休憩を取った後で、カヤックに乗り込む。波はかなり少なくなっていて、漕ぎやすい。なぜか、友人のパドル捌きが先ほどよりも上達している。



 湖上から見る海津の石積みの光景は、いつ見ても美しい。そう思いつつ、周囲を眺めていると友人が、

「ここで絵を描いてみたいです。」

と呟いた。

いつか、琵琶湖を描いた彼の絵を見ることが出来たらいいと思いつつ、カヤックを乾かし、家路に着いた。

マキノから今津


 
  キールを紛失して以来、久しぶりのツーリングだ。今回も、電車を使ったツーリングである。8時半にマキノの高木浜に到着し、カヤックを降ろす。そのまま車をマキノ駅の駐車場へ置きに行き、徒歩で高木浜の「湖のテラス」へ向かう。まだ9時前なのに、浜辺では、夏の終わりを楽しむ人たちで賑わっている。

  晩夏とは言いつつも、まだまだ影が濃い。正確には、影が濃いのではなく、日射しが強いので、影とのコントラストが高くなるため、濃く見えるのだが。



 

  「湖のテラス」の北側に、芝生で木陰がある場所があったので、そこでカヤックを組み立てることにする。いくら日陰とは言え、まだまだ暑い時期なので、組立作業は大変だ。汗が大量に吹き出てくる。ツーリングで一番体力を消耗するのは、「組み立て」「撤収」「運搬」だ。しかし、漕ぐためには、避けて通れないので、あまり深く考えないで、組み立てることにする。

 今回は、新アイテム「ノーズガード」を導入した。カヤックの舳先をガードするために装着するものだが、バウ側は装着方法の説明があったけど、スターン側は入っていなかった。装着方法は、これで合っているのだろうか?
 ガードするという本来の目的からすれば、合っているのだろうけど。。。。







  9時20分頃には、組み上がった。この場所で、荷物をカヤックに積み込み、コーミングカバーを装着してしまうと、かなり重量のある状態でカヤックを水辺まで運ばなくてはならないので、取りあえずカヤックだけを水辺まで運ぶ。

 カヤックに荷物を積み込み、コーミングカバーを装着した後で、忘れ物がないか念入りにチェックする。うっかり、キールとかを忘れてしまっていたら大変だ。

(組みあがった後なので、キールを忘れることはありえへんが。)

 この日は、僕のほかにも6人くらいのカヤックのグループが来ていた。全員ファルトだ。組み立てる姿を見ていないので、どこか他の場所で組み立てたのだろう。彼らは北へ向かうみたいだ。

 この段階で、暑さでクラクラしてきたので、湖に体を浸してクールダウンする。流入している小さな川があるため、この場所は水温が低くて気持ちいい。

 クールダウンした後で、カヤックに乗り込み南へ向かう。



 

 少し漕ぐと、体調がきつくなってきた。組み立ての時に大量の汗をかいたので、熱中症の症状が出ている。お茶だけでは、栄養補給が出来ないので、プリンスホテルの売店で、スポーツドリンクを飲むことにする。

 あー。好き好んで、こんなところで、何やってるんだよー。と少しめげてくる。

 ほどなく、体調は元に戻り、ツーリングを再開する。

 いつものように、知内川を遡ってみる。琵琶湖の、生ぬるい水とは違い、気持ちの良い冷たさだ。船体布を通じて、体に冷たさが伝わってくる。魚影もいつもどおり濃い。この川は、河口部分の水深がすごく浅いので、底を擦らないように、慎重に進む。結果的に、ライニングダウンは必要なかった。

 知内川から琵琶湖に戻り、百瀬川を過ぎると、浜辺には人がほとんどいなくなった。湖岸道路をサイクリングする人たちがいるくらいだ。

 体調は元に戻ったけど、この辺りは、漕いでいてあまり楽しくない。何で、楽しくないのかというと、周囲の景色だろうなきっと。写真を撮りたいと思うようなものが何もないのだ。これって、僕にとっては、かなり重要なことだ。

 しばらく漕ぎ進み、今日の目的の一つである境川河口に到着した。ここは、琵琶湖カヤックガイドのお姉さんに教えてもらったコウホネの群生地になっている。

 でも。。。。

 多分、ここに来る時期が少し遅かったようだ。花の数は少ないし、枯れかけている花もある。それでも、良さそうなものを探して、写真を何枚か撮影する。

 この辺りは、漕いでいて楽しい。




 

 この日は、コウホネの写真を、しっかりと撮ってやろうと思いPLフィルターを持参した。いつもは面倒くさいし、露出倍数がかかるので、持って行かないのだが。。

 「PLフィルター」の説明を簡単にしておくと、「偏光」を除去するフィルターである。その効果として、水面の反射をかなり取り除く事が出来る。風景写真では、空を青く濃く写すことが出来る。

 
 キールを紛失してしまい、発注している間にコウホネの最盛期を逃してしまった。7月の下旬くらいに来るのがいいのかな。8月だと暑すぎるし。また、来年以降に来ることにしよう。

 せっかくなので、境川を遡ってみる。知内川の清冽さとは対照的に、濁った川だ。

 地図で見ると内湖があるはずなので、通じている水路を探してみる。水路があるにはあったが。。。

「えー。こんなところから入るの? 無理っ!」

 そんなわけで、内湖に入るのは、諦める。

「えー。こんなところを漕ぐの?」的な状況に陥った、3度目の経験であった。最初は水郷で、2度目は近江舞子で、3回目はこの日である。



 

 境川を退散し、再び、終わりかけのコウホネ群落を通過し、トイレのある浜で、昼食を兼ねた休憩を取る。本当は、カレー屋に行きたかったのだが、なぜかこの日に限って、出かけるときに半ば強制的におにぎりを持たされたのだ。

 上陸した浜は、水が澄んでいてきれい。PLフィルターのおかげで、水の澄み具合が、写真で表現出来るのが嬉しい。





 この浜辺には、小さな東屋があり、そこで昼食にした。この時期、日射しを避ける場所があるのはとてもありがたい。

 その東屋には、木のテーブルが置いてあり、板の間のわずかな隙間から何かの植物が生えていた。光を目指していたら、葉を出すことが出来たのだろう。



 
 昼食後、再び今津を目指す。

 今日の航路は、大型の魞が多い。岸沿いに魞に続くロープの上を通過する時は、いつも冷や冷やする。魞は、どのように通過するのが正しいのだろうか?


1 沖へ出て迂回する。(危険度90 面倒くさい度50)

2 岸部のロープの上を船底を擦りつつ、通過する。(危険度20 船体布が少し心配)

3 ロープを持ち上げて下を潜る。(危険度60 その前に実行不能かも)

4 ポーテージする。(危険度0 面倒くさい度100)

5 気にせずに針路を変更せずに、突っ込む。 (危険度100)


やっぱり、いろんな条件を考えると2だな。



 石田川の河口を過ぎると、今津の集落が見えてくる。海津もそうだけど、湖上から見える古い集落の眺めは、とてもいいものだ。


 僕のカヤックは、タンデム艇なので、一人で乗るときはコーミングカバーを装着している。その状態で写真を撮ると、黒い部分の面積が広いので、あまり美しくない。ここに、何か書いた方がいいのかな。

 書くなら、カヤックに名前を付けて、それを書くとか。古来より、船の名前は女性の名前を付けることになっているらしいが、この黒い場所に、「なんとか子号」とか「なんとか代号」とか「なんとか美号」って書けばいいのだろうか?

 それってしかし、名前の選択を誤ったら、僕の立場が窮地に陥ることに。。。

 でも、その時の状況に応じて、違う名前のコーミングカバーを用意しておくことも可能だな。
 (しかし、その時の状況って、何だ。)


 久しぶりのツーリングで、腕が疲れてきた。今津港には、竹生島行きの観光船が入港している。エンジンがかかったままなので、船の後ろは水流が発生している。水流の影響の少ない場所まで観光船から離れて、今津港から少し南へ下った浜辺に上陸した。時刻は1時30分。

 
 冷たいサイダーを飲みながら船体布を乾かし、ザックに収納し、忘れ物がないかしつこいくらいに念入りにチェックしてJRの近江今津駅へ向かう。徒歩10分弱かな。この駅は、ホームに上がるエレベーターがあるので助かった。電車の本数は少ない。1時間に1本しかない。


 電車に乗り込んだら、おじさんが話しかけてきた。

「その大きな荷物は何?」

「カヌー」だと答える。「カヤック」というよりは、そちらの方がわかり易いと思うのだ。そのおじさんは、以前から興味があったらしい。マキノ駅へ到着するまでのわずかな時間だけど、いろいろと質問を受けた。おじさんは65歳で、やりたいことは、今のうちにやっておきたいのだ、とも言っていた。

 それならやった方がいいと思った。迷っているうちに年を取ってしまう。あなたの年齢だと、その時間がかなり惜しいはずだ。(それは、誰にとっても本当は同じなのだが)

 でも、彼の「今のうちに」という言葉には、全ての事が含まれているような気がして、僕はそんな事は言えなかった。

 いつか、彼に、この広い湖のどこかで会えればいいなと思いつつ、マキノ駅で下車し、カヤックを車に積み込み岐路に着いた。


 この日、漕いだのは10キロ弱。久しぶりなので、あちこち筋肉痛になった。

 

レジャーとしてのカヤック
 
 家族3人でマキノでカヤックに乗ってきた。一人でカヤックに乗って、ツーリングする時は、僕のようなヘナチョコカヤッカーでも、それなりにストイックなものを精神的に秘めているわけだが、今回は、海水浴場で、ゴムボートに乗るような感覚だ。そんなわけで、テキスト以外の、データはない。

 この日、10時くらいに出艇したけど、レジャーとして楽しむには少しだけ波が強かった。3人で乗ると喫水が深くなり、大きな波が来るとすぐに、カヤック内部に水が入ってしまうような状況だ。足元も狭いし。子供が成長したら、さすがに3人は乗れないな。知内浜、高木浜を午前と午後で2往復した。

 知内川は、何回行ってもおもしろい。河口辺りは、砂が堆積していて、かなり浅くなっていたので、ライニングダウンをして知内川に入った。魚影がとても濃く、いたるところで魚がジャンプしている。水温も琵琶湖よりも格段に低く、ファルトの船体布を通して、足を気持ちよく冷やしてくれる。タモを使って、魚を捕まえようとしてえいる人がたくさんいたけど、実際に捕まえた人はを見ることはなかった。

 途中、浜に降りて、泳いでみることにした。ゆっくりと琵琶湖に浸かるのは、今回が始めての経験かもしれない。PFDを付けた状態で浮かび、空をしばらく眺めていた。こんな夏がずっと続けばいいのにと思いながら。
白髭神社経由で近江舞子から近江高島



 電車でのカヤックに、すっかり味を占めて、今回も電車でカヤックをやることにした。しかも、久々にアリュート380TのY君と一緒に漕ぐ。12月の水郷以来だ。二人だと、何かと心強いのが嬉しい。

 前回のゴールが近江舞子だったので、今回は近江舞子から白髭神社を経由して近江高島まで漕ぐことにした。この日の天気は午前中は曇りで午後が晴れ。10時頃、近江舞子駅近くの浜から出艇する。途中、グローブを外し、湖水に手を浸けてみる。この時期の水温はまだまだ低く、長い時間は手を浸けてはいられない。

 漕ぎ進んでいると、湖上には、いくつもの空気の層が存在することが分かる。冷たい空気が鼻腔を通過し肺を満たすと、冬の最後の名残を感じる。さらに漕ぎ進むと、夏の湖岸の匂いを感じるところもある。両方を感じ取ることが出来るのは、初夏ならではであろう。

 「夏の湖岸の匂い」は、水草の匂い、魚等の湖の生物が腐った臭い、命の活動が活発になる夏だからこそ発する匂い。夏が近付くに連れて、より一層濃くなっていくのだろう。それは湖岸に立つ人の共通認識なのであろうか。それとも、僕個人だけの感覚なのだろうか。 

 しばらく漕いで、少し早いが昼食にする。この日も、おにぎりと唐揚げ。今日は落とさないように慎重に食べる。昼食を食べた浜は、松が繁るバンガロー小屋があるところで、シーズンオフのせいか人はいない。Y君は松ぼっくりを湖面に浮かべて遊んでいる。
 
 この日も、葛篭尾崎のトラウマがまだ癒えていないので、岸部をずっと漕いでいく。しかし、葛篭尾崎で得たのではトラウマではなく、教訓だと思うようにしたい。

あーそれなのに。。。

 スタート地点から5キロほど漕いだところで、大型のエリが出現。Y君は沖へ出てエリを迂回しようとしている。エリと岸部には、充分カヤックで通過出来る空間があるのにっ!

 仕方がないので、僕も沖へ出てエリを通過することにする。幸いこの日は風もなく波も穏やか。Y君に、沖へ出て怖くないのかと尋ねたところ、このほうが最短距離で漕げるからとの返答。そのまま、白髭神社へ向かうことにする。





 

 振り返って、西側の山を見てみる。艇を出した時間は曇っていたけど、徐々に晴れてきて陽射しも強くなってきた。これぞ初夏の陽気だ。湖と山と空のコントラストがとても美しい。

 ほどなく、白髭神社の湖中の鳥居へ到着する。ここは、カヤックで漕いでみたかった場所だ。それを今日、達成することが出来た。他にも漕いでみたい場所はある。「いつか漕いでみたい場所」よりも、「漕いだことがある場所」の方が多くなる日が来るのだろう。でも、そうなったとき、この時期にあの場所を漕いでみたい。という次の欲望が沸々と湧き上がってくるはずである。それを達成したら、また別の欲望が湧き上がって来るのだろうな。まったく、人間というのは、欲深いものだ。
(それは、おまえだっ)






 さてさて。。。

 鳥居を堪能した後、せっかくだから上陸して白髭神社も、参拝してみることにする。しかし、上陸出来る場所がない。小さな砂浜を発見し、そこにカヤックを上げたのはいいが、3メートルほどの石垣を登らないと、神社には行くことは出来ない。その石垣は、城の石垣のように「く」の字型になっているため、危険が伴いそうだ。登るのはいいが、降りられるのだろうか。。等と考えていたら、Y君が既に石垣の上まで登っていた。石垣の上に上がったY君が、

「Oeさん、怖くって下に降りられません。」

 そんなわけで、カヤックを係留するために使うロープを石垣の上にあるガードレールに引っ掛けて、降りるときはそれを使うことにした。無事に、白髭神社への参拝も終わり、石垣をロープ伝いに降りて、カヤックに乗り込み、ゴールの浜を目指した。

 白髭神社を過ぎてしばらく漕いだら、コンクリートで護岸された場所がしばらく続く。あまり好きではない風景だ。浜辺がずっと続いているような場所が、僕はやっぱり好きだな。





 今回は、明確なゴールの浜辺を設定していない。近江高島駅近くの浜辺という目標しかない。ナビを見ながら、適当な場所に上陸することにする。2時近くになっているので、そろそろ上がった方がいいだろう。


 この浜辺には小さなクリークが、琵琶湖に注いでいる。その河口を、じっと見ている人がいる。河口に魚が集まったところに網を打つのだろうか?
 その傍らで、子供連れの家族が、午後の穏やかな時を過ごしている。琵琶湖の波も穏やか。この浜辺が、人であふれる季節がすぐそこまで来ている。




 カヤックを乾かし、折りたたみ、ザックへの詰め込み作業を行う。ザックをカートに乗せた後、近江高島の駅へ向かう。この浜からだと1キロくらい。途中、旧街道筋で地酒を買って、ビンが割れないように丁寧にタオルでくるみ、バックパックへしまい込んだ。

 近江高島の駅もエレベーターはない。今日は二人なので、荷物を二人がかりで階段を登り、2往復して引き上げた。この方が随分、楽なのだ。

 この日の漕行距離は10キロくらいだった。

 

和邇から近江舞子



 今回は初の電車を使ったワンウェイカヤックに挑戦してみた。

 前回、葛籠尾崎で怖い思いをしたので、実はカヤックというものに対して、かなりびびっている。その気持ちを引きずりながらの今回のツーリングである。トラウマが癒えていないのなら、ほとぼりが冷めるまでカヤックは、お休みにすれば良さそうなんだけど、そういうふうにはならないのが、我ながら度し難い。そんなわけで、今回はビビリ感満載のツーリングであるので、そこんとこよろしく♪

 比較的波が穏やかな午前中に漕ごうかと思い、朝5時半に家を出る。途中の総菜屋でおにぎりと唐揚げを買って、7時半過ぎに和邇漁港に到着して、カヤックを組み立てはじめる。今回は和邇駅まで電車で帰ってこなくてはいけないので、カヤックにカート等を積載する必要がある。積載後のカヤックは、容易に持ち運ぶ事が出来ない重さになるので、バウを水面に浮かせた状態でスターン側に荷物を積み、その後、コーミングカバーで密閉した。

 今回は、予備パドルは持って行かない。岸沿いに漕ぎ進む予定なので、いざとなったら、泳いで岸まで辿り着けばいい。いつも使っている2Pのパドルはグラスファイバー製なので軽いけど、今回はザックに収納しないといけないので、普段は予備パドルとしているアルミシャフトでナイロンブレイドのTNPの4Pパドルを重いけど使う事にする。

 今回は10キロほどの漕行距離だけど、このパドルでも問題はなかった。この記事は翌日書いているけど、腕に疲労はまったく残っていない。


 さて、、、、

 いよいよ出発しようとした時に、バケツを持ったおじさんが話かけてきた。隣にある漁港の漁師さんかもしれない。

「今年は天候不順で、まだ3月のような気候なので、危ないから気をつけなさい。最近も何人か亡くなっているし、水温が低いせいか、蝋化して遺体も浮いてこないんだよ。じゅあ、そういうことだから。」

 そういうことだからって。。。


 そんなことを言われたら、ビビリメーターは、さらに上昇してしまう。準備万端なのに、もう撤収したいような気分になってきた。

 8時40分に、怖い気分を押し殺しつつ、波が穏やかな湖面に出る。天気予報では晴れだったのに、曇っている。少し嫌な感じだ。今のところはいいのだが、急に天候が変わってもおかしくないような雰囲気だ。やばくなったら、即時撤収しようと思いつつ、パドルを動かしていく。

 
 うーん、スカッと抜けている景色ではないので、カラー写真向きではないけど、それも春らしくっていい。この14本のポールはいい。今度、大判カメラを持って写真を撮りにこよう。背景の霞んだ山といい、中央より右側ポールの傾き具合といい、芸術的に洗練されている。モノクロ写真向きの被写体である。
 画像処理のツメが甘いため、ポールが変な風に写っているけど、まあ、それはご容赦いただきたい。






 僕はどちらかいうと、湖東は近いけど湖西は遠いのだ。そのため、土地勘があまりない。今回のツーリングの前に、琵琶湖カヤックガイドのおねえさんに、いろいろと情報いただいた。出艇位地やどこに何があるか等、教えていただいたので、今回はスムーズにこなせるはずだ。
 やばくなったら、すぐに岸に上がればいいし。(逃げることばっかりだな。)

 この岸辺はいいなあと思う。人口が多いせいか、湖と人との距離が近いような気がする。ソメイヨシノとは違う桜や菜の花が咲いている。新緑がとても美しい。いたるところに、釣り人がいる。僕にとっては、とても安心できる心地よい空間である。それに対して、葛籠尾崎は対照的だ。


 しばらくすると、南国ムードの浜に出た。3年前に行ったボルネオ島のビーチに似ている。
 (ような気がする。)

 この辺りから、水上バイクが増えてくる。でも、怖いので岸辺しか漕がないので、安全だ。彼らは岸近くでスピードを出すことはないだろうし。


 

 
 今回のコースは、ほとんどの場所の土質は砂なんだけど、たまに岩が沈んでいる場所がある。そういうところは、大抵の場合、岸辺にも岩がごろついているので、そういうのを見かけたら注意しなくてならない。前回みたいに座礁しても、最悪の事態になった場合、今回は岸が近いので大丈夫だけど。






 岸辺に沿って漕ぐと言っても、障害物に遭遇した場合は、それを迂回するために沖へ出るか、ポーテージするしかない。今日は沖へ出るようなタフネスは持ち合わせていない。今後もそうした方がいいかもしれない。だからまあ、ポーテージするか、諦めてその場で撤収するか、戻るかになるわけなんだけど、荷物満載のカヤックを陸上で動かすのは現実的ではない。

 この写真のような魞に遭遇したのだが、沖へ出て迂回するのは怖かった。でも、カヤックに乗ったまま綱の上を通過すると、船底を擦って艇を傷めそうだ。陸上でポーテージするなら、コーミングカバーを外して荷物を取り出さなくてはならないので、面倒くさい。しかもこんなわずかな距離を!

 そんなわけで。。。。





 艇から降りて、綱を足で踏み、綱を沈めてその上を水に浮かせた状態でカヤックを通過させた。
(ブログに後から掲載することを想定して、ちゃんと説明写真を撮っておいた。)

 
 そんな感じで漕ぎ進めていくうちに、ガイドのおねえさんに教えてもらったカヤックで直接行けるカフェに到着した。ここでコーヒーでも飲みながら小休止しようと思ったら、まだ開店時間前だった。店が開くのを待っていてもいいんだけど、天候が心もとない状況なので、先を急ぐことにした。

 じきに近江舞子の浜に到着する。こんな日でも、浜辺で憩う人たちがいる。子供たちがこちらに向けて手を振ってくるので、こちらも手を振り返したりする。ゴールの浜が近づいてくる。

 しばらくすると、内湖に入る水路があるはずだ。流入している川や内湖があった場合、必ず入ってみないと気がすまない。そんなわけで、内湖に入る水路を進んでみる。


 
 
 あれ?これって、この間を漕げっていうの??
しかも、向こう側は、葦と水草ぎっしりで、下手に進むと行き止まりで引き返せないんじゃないの?
そんなわけで、この内湖を探検するのは諦めた。

 それなら、近江舞子の駅も見えてきたことだし、撤収しよう。

 でも、、

 そう言えば、カヤックガイドのおねえさんって、撤収する浜は、内湖へ入る水路の手前って言ってたかな?それとも、水路を過ぎた浜辺って言ってたかな。。

 内湖に気を取られていて忘れてしまったけど、もしかして、それって重要なんじゃないの?
 
 多分、駅が近い方は、水路を過ぎた浜なので、そこでいいような気がする。
浜辺に上陸して、駅へ向かう通路があることを確認し、安心し、撤収する。




 カヤックを乾かしている間、買ってきた、おにぎりと唐揚げを食べることにする。時間は12時。今日のツーリング時間は3時間くらいだった。

 大好きな唐揚げを、箸でつまんだら、転げ落ちて砂浜に落ちてしまった。幸い、この国には3秒ルールという便利な掟が存在する。すかさず、箸で唐揚げを砂浜から救出するが、2.3秒くらいしか経っていないのに、もはや唐揚げは砂まみれ。3秒ルールも当てにならないなと思いつつ、琵琶湖の水で洗って食べようかと思ったけど、そこまでの危険は犯せないので諦めた。
 今回はあらゆるリスクを避けるのだ。

 昼食後、少し離れた場所でカヤックを収納していたら、カラスが先ほどの唐揚げを持って行くのを目撃した。

 カートにショックコードでザックを縛り付けて、近江舞子の駅へ向かう。ここからなら5分もかならない距離だ。上陸する浜辺を間違わなくて良かった。

 切符を買って時刻表を見ると出発するまで3分しかない。あわてて、電車でカヤックをしたという証拠写真を撮影する。これが、この日の荷物一式。





 やれやれ、あとはエレベーターでホームに上がるだけだと思ったが、この駅ってエレベーターがないんじゃないの???

 あわてて、ザック一式を抱えて階段を登った。

 和邇駅までに向かう車窓から、今日の行程が復習できる。撮影した写真の整理もある程度は出来てしまう。電車でカヤックもいいなあ。

 和邇駅から漁港までは、10分くらいなので、カートで荷物を転がして何の苦もなく到着した。

 またいつか、電車でカヤックをやってみよう。
 


 


海津大崎




 今回から、GPSロガーを使用して、記録することにした。今回の漕行距離は12キロである。

 秋の奥琵琶湖を漕いだ。前回、ここに来たのは9月なので、2ヶ月ぶりくらいになる。準備をして、10時に海津漁港近辺の浜から出艇する。まずは、南西に進路を取る。浜辺には、夏と違い人影は随分、まばらである。水中にあんなに茂っていた水草も、ほとんどなくなっている。季節が確実に移り変わっているのが実感できる。
 この日は、化繊の長袖Tシャツを3枚重ね着していた。防寒にフリース一枚。さらに寒ければ、カッパを着ればいいと思っていたけど、Tシャツの重ね着だけでも暑いくらいだった。最近のスポーツ用のウェアっていうのは、とても高性能だ。

 どんどん漕いで、知内川河口から上流に遡ってみる。あんなにたくさんいた小鮎は、もはや見る影もない。季節によって、こんなに変わるものかと、驚く。この周辺の琵琶湖はカヤックをやる前も、何回も来ているけど、そんなことは、まったく気づきもしなかった。




 この日は、波は穏やかだった。時折、何が原因かは分からないけど、湖面にうねりが発生する。たいしたうねりではないし、すぐに収束していくので問題はない。湖面が穏やかなので、知内川の河口から、海津大崎まで一揆に漕ぎ進む。この距離は2キロあまりなのだが、僕にとって、岸から離れるので、かなりの冒険気分になる。急に波が出てきたら困るので、急いで漕ぐことにする。しかし、最近はまっている水面ぎりぎりショットの写真はしっかりと撮影しておいた。防水機能のないデジタル一眼を使用しているので、水面ギリギリショットは、かなり気を使う。でも、画質優先なので、仕方がない。

 それにしても、カヤックをやっている人がいない。今日なんて絶好のカヤック日和だと思うのだけどなあ。夏の間は、キャンプ場にカヤックを置いている人が、ちらほらいたけど、その人たちはキャンプのついでにカヤックをやっているのかな。ほんと、カヤック人口は少ないと思う。






 海津大崎にある大崎寺から大浦方面への湖岸は、岩肌が露出している。その岩肌に、紅葉した葉が茂っていたりしてする。天然の日本庭園の様相だ。しばらく漕いでいると、獣の死体を発見する。まだ新しい死体。猿かと思ったが、近付いて見たら猪だった。死んでから琵琶湖に落ちたのか、琵琶湖に落ちて溺死したのかは分からない。

 さらに、岸沿いに漕ぎ進んでいく。そのうちに左側に、竹生島が見えてくる。今日は雲ひとつない快晴だけど、大浦の辺りは霧が出ていた。大気中に水蒸気が多いせいか、視界がクリアとは言いがたい。この辺りは、桜の名所のためか、紅葉した桜の落ち葉が、湖面に漂っている。それも秋の風情だ。

 大浦の集落が見えてきたところで、折り返すことにした。この調子なら、僕一人でも、永原駅からマキノ駅まで電車を使ったワンウェイツーリングが出来るかもしれない。大崎観音手前の小さな砂浜に上陸して、熊の影に脅えながら、ラーメンとおにぎりで簡単な昼食にする。
 食事中に、何か骨を発見した。湖水で洗われていて、とてもきれいな骨だ。生々しさはまったく感じられない。この骨以外の部分の骨が周囲にないので、漂着したのだろうと思う。記念に持って帰ることにした。





 そこからは、岸沿いに進む。途中、魞のワイヤーが、岸まで続いている。カヤックでワイヤーの上を通過出来そうな場所を探した。あまり無理をすると、ワイヤーでガリガリと底を擦ってしまうので、気をつけないといけない。今回は何とか通過できたけど、状況を見て、ポーテージすることも必要だろう。

 海津の集落近くの浜辺に入る。この辺りは、人の生活の気配がして、心地よい。端板近くの湖面に写りこんだ建物がユラユラと揺れて、おもしろい。桟橋近くの木も紅葉している。




 1時少し前に出艇位置に戻った。あとは、コーヒーを沸かしながら、のんびりとカヤックを折りたたむだけだ。漕いでいる最中、浜辺のあちこちで、焚き火の煙が上がっている。僕が出艇した場所でも、焚き火をしている親子がいた。焼き芋を作っていたようだ。久しぶりに、焚き火で焼き芋を作る光景を見た。


針江水郷

 



 10月23日土曜日、湖西の針江水郷へ出かけた。7時30分に自宅を出発して、9時20分に到着した。琵琶湖岸には、あちこちにトイレ併設の無料駐車場があるが、今回もそういった類の場所に駐車した。車から湖までは至近距離なので絶好のロケーションだ。車を降りると、京都の山科から来たという、おじいさんが話しかけてきた。その人は、三脚を持っていたので写真撮影が目的かと思ったら、どうやら絵を描きに来ていたようだ。

 僕が車からカヤックを取り出して、フレームを組み立てていると、「ボートですか?」と尋ねられたので、「カヤックです。」と言うと、「カヤックって、水中で回転するやつですよね?」という返事が返ってきたので、「えっ!?そんなに頻繁にそんなふうになるものじゃないですよ。僕は、今年始めたばかりだけど、まだ一度もそういうのは経験していません。」と答えた。世間のカヤックのイメージは、多分、そうなのだろう。僕も、始める前はロールしている姿がカヤックのイメージであった。職場では、「カヤックってヘルメット被ってやるやつでしょ?」と言われたこともある。どちらもファルトボートで、のんびりと湖上散歩するイメージではない。やはり、世間では、カヤックは激しいものだと思われているようだ。

 9時20分に到着したので、10時には出艇出来るかと思ったが、写真を撮ったりしていると10時20分くらいになってしまった。そもそも、カヤックの組み立てだけなら20分もあれば何とかなると思う。時間がかかるのが、エアスポンソンや浮力体に空気を入れたり、食料や写真機材をカヤックに積み込んだり、予備のパドルやビルジポンプをセットしたりコーミングカバーを被せたりという、一つ一つの細かな作業に時間を取られてしまうのだ。まあ、それは仕方がない。

 前回までは、サンダルと半ズボンで、水の中にジャバジャバと入っていたけど、今回から、前回書いたように、長ズボンと長靴である。上半身は、スポーツ用の長袖Tシャツの下着を買い、さらにその上に化繊の長袖Tシャツを着た。これって、すごい。おそらく、綿製品であれば、汗でビショ濡れだったと思うが、常にサラサラした状態である。素材としてはラッシュガードに似ている。近年は、安価でこういうものが手に入るようになって、ありがたい。

 さきほどの、絵描きのおじいさんに「行ってらっしゃい。」と送り出されて、漕ぎ出す。湖底に水草が生えている。パドルに絡みつき、漕ぎ辛い。この辺りの水の透明度はあまり高くない。ほぼ無風状態なのに、速度があまり出ないのは、湖水の流れによるものだろう。480スペリオだったら、もっと速く漕ぎ進めるのだろうか?進行方向の左舷にキャンプ場がある。夏の時期に比較すると客足は少ない。キャンプするのであれば、今の時期の方が涼しくっていいような気がするのだけど。そのまま、岸沿いに漕ぎ進む。この一ヶ月くらい風邪をひいていて、ろくに体を鍛えていなかったせいか、すぐに腕が疲れてくる。休みながら、漕ぎ進む。ちょっとした岬を過ぎた辺りに白い鳥を発見。コハクチョウだ。そうか。そろそろ飛来の時期なのだ。そこにいたのは4羽ほど。首のグレーがかった、まだ若いコハクチョウもいる。こちらの存在に気がついたのか、鴨達と一緒に、飛び立っていった。僕は、すかさずカメラを構えた。この日、望遠レンズを持ってこなかったのが悔やまれる。これからの季節、冬鳥で琵琶湖は賑やかになる。僕は、彼らを追い回したり、驚かしたりはしたくはないが、同じ湖面に存在している以上は仕方がない。いくらこちらに危害を加える気はなくても、彼らは身を守るために逃げ去っていく。でも、そうでなくてはならないのだ。





 水鳥たちが飛び去った後、岸沿いを漕いでみる。この辺りの岸辺は、陸地からはアクセス出来ないため、人の出入りはない。カヤックだからこそ辿り着くことが出来る岸辺だ。この岸辺近くの陸地は、土ではなく、葦や木の根等の堆積物で形成されているようだ。このような性質の土壌は、湖水の汚れをこし取るようなフィルターの役目を果たし、湖水を浄化しているのだろう。人の心にもこういうフィルターがあればいいのにと思う。ずっと以前は、琵琶湖の湖岸のほとんどの場所が、こういう状態だったのだろう。岸辺の薮の中から、ガサガサという音が聞こえた。まさか、熊!?今年は山のドングリが不作らしく、食料を求めて熊が山から里へ降りてきている。この場所で熊と遭遇しても不思議はない。でも僕はカヤックで湖上にいる。まさか、ここまでは来ないだろうと気を取り直した頃に、ガサガサの正体が薮の中から飛び出してきた。つがいのイタチだ。イタチを熊だと想像するなんて、僕は、何て臆病なのだろうか。その臆病さがたたって、未だに、沖へカヤックを漕ぎ進む事が出来ずにいる。その理由の一つに、カヤック仲間がいないので一人で漕ぐことが多いということもあるのだが。だって、僕のアルピナ2−430の船体布には、「カヌーは一人でしないでください。」と書いてあるのだから、危険は冒したくはない。

 そりゃまあ、家族や友人を乗せて一緒に漕ぐことはある。でも、その時はレジャー気分だ。それはそれで、もちろんとても楽しく有意義な時間ではある。一人で漕ぐと、自分の心がこの世界と直接対峙出来ている気分になる。漕いでいるうちに、心が研ぎ澄まされたような気持ちになってくる。そんな時には、素晴らしい光景を見ることが出来る。その光景は、おそらく、普通に存在するものだと思う。それを素晴らしく感じ取る事が出来るのは、僕自身にそれを感じ取る心の準備が出来ているからなのだ。

 30分くらい漕いで、針江大川河口の水門を潜る。水門を抜けたらすぐに半分くらい沈没している船があった。どこの水郷でも、沈没船は、必ずといっていいほど存在する。もはや、沈没船は水郷の必需品であるとさえ思ってしまう。川を遡る形で漕いでいくわけだが、流れが緩やかなので、手漕ぎのカヤックでも、充分、川を上っていける。すぐに、水郷ムード満点の場所に到着した。葦が茂っている。名前は分からないけど、水草がたくさん生えている。カイツブリの巣がある。しかし、本当に素晴らしい水郷風景があるのは、限られた区間なので、その間をカヤックで何度も行ったり来たりして、何枚も写真を撮った。水は澄んでいてきれいだけど、川底にはゴミが落ちている。空き缶やビンが目立つ。これらのゴミは、長い水郷の歴史の中で、ここ数十年で堆積していったものだと思われる。それ以前には、そもそも、ゴミになるような空き缶や空きビンなんてものは、存在しなかったからだ。




 
 さらに針江大川を漕ぎ上ってみる。僕のカヤックの前を、一羽の鵜が泳いでいる。知内川や姉川と違って、魚影は少ない。川の規模が小さいということもあるんだろうけど。国道と針江大川が重なる辺りで、引き返すことにした。帰りは、ひたすら下っていくだけである。河口の水門をくぐり、琵琶湖へ出る。沖に大きな作業船が停泊している。まるで、要塞だ。気分は、要塞めがけて漕ぎ進む某国の諜報部員である(笑)。要塞見学をした後、出艇場所まで戻ることにする。さっきまで晴れていたのに、曇が広がってきた。





 風は相変わらず吹いていない。とても静かな湖面だ。ほどなく、出艇位置に戻る。ここにも、杭が何本か突き出ている。杭から、別の木が生えている。鳥が、木の種子が入った糞を落として、それがそのまま発芽したのだろう。1時30分くらいに上陸したら、絵描きのおじいさんが、帰り支度をしていて、僕に「おかえり。」と声をかけてきた。少し、話をして別れた。その後、カヤックを乾かす間、お湯を沸かし、ラーメンを作って昼食にする。

 この日、漕いだ距離は5キロ弱だと思う。湖の上には道があるわけではないので、自分の正確な軌跡が分からない。GPSロガーを近いうちに買おう。もっと船速があるカヤックなら楽に進むのかな。